転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ～一途な恋の音色～

「今日はありがとうございました。メリアーナ様お身体お大事にしてくださいね」

外は寒いのでお店の中で挨拶をしていたら、何やら騒がしい声がしているのに気づいた。
外に出るとよりはっきり聞こえてきた。

「まぁ！女の子が絡まれているわ！」

「誰か！」

僕は騒ぎになって人が集まっているところを見る。

『……ッ！！』

『痛いっ！』

『ぜひ私と一緒に！』

『……ッ！やめてください！！』

え！？この声クレアに似てる！！
体型の大きな男に腕を捕まれている女の子がいた。
あの髪色とこの声はクレアだ！！
あの男！クレアに何をしてるんだ！！
僕はすぐに走り、集まっている人を避けながら通り、クレアと男の隙間に入り込む！

「クレアから離れろ！！」

僕はクレアの腕を掴んでいる大きな男の手を払い、男を睨みつける！

「な、なんだおまえは！？」

一瞬怯んだ男だが、僕に向かって手を上げてきた。
僕は素早く男を掴むと右脇に入り込み背負い投げをした！

ダアンッ！！

「グァッ！！」

男は地面の上で大の字で気絶し、辺りはシーンと静かになった。

しばらくして『ワァッ！！』と歓声が上がる。

僕はすぐにクレアの無事を確かめた！

「クレアッ！大丈夫！？」

「ルカッ！！」

小柄なクレアにはあの大きな男はかなり怖かっただろう。
大きな瞳に涙がたまり、今にも零れてしまいそうだ。
僕のクレアが震えている。

「怪我はない？」

「う、うん」

頷いた拍子に涙が零れ落ちた。
すると、クレアが震えている手で僕の手を両手で握る。

「ルカは大丈夫？ ピアノを弾く手が……」

「…このくらい平気だよ」

頬に流れている涙を親指で拭い、クレアを強く抱きしめた。
こんな時なのに僕の指の心配をするなんて、君らしいね。
君の大きな瞳を見つめてクスリと笑い、僕はクレアを横抱きにする。

「きゃっ！」

急に体勢が変わって驚いたクレア。

「僕にしっかり掴まってて。送って行く」

怖い思いをして震えているクレアを歩かせるなんてできない！
僕はイチオシ堂の前にあるクスフォード家の馬車までクレアを連れて行った。

「あとは任せておけ」

「ありがとう」

ポンと僕の背中を叩いて玲お兄ちゃんは倒れている男のところへ行ってくれた。
僕は馬車の中でもクレアを横抱きにしたままギュッと抱きしめていた。