転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ～一途な恋の音色～
『ローズ菓子店』を出てからは、書店に立ち寄りおもしろかった本の話をしたり、美術展や音楽の話をしたり、子供の頃によく行っていたお店に寄ったりして僕達は街を歩いた。

大きな噴水がある広場に来た。
ホットドッグやジュース等の屋台が数台並んでいる。

「ちょっとここで待っててね」

近くのベンチに僕のハンカチを敷き、クレアに座ってもらった。
クレアの好きなイチゴのジュースを買って戻る。

「ありがとう」

「こういうの久し振りだね。前はルイとシェイラと４人でよく街に遊びに来ていたね」

「そうね。最近はお姉様とルイはふたりでデートしているものね」

なんだかこれもデートみたいじゃない？

「いいお天気ね」

クレアが青空を見て微笑む。
春の風がフワリとクレアの綺麗な髪を靡かせる。

「クレア」

僕はクレアの編み込んでセットしているサイドの髪に、さっき屋台の花屋で買ってきたピンクと紫色のバラを数本飾る。
子供の頃に庭園を散歩していた時のように。

「え、ルカ……」

「似合うよ」

そのままクレアの大きな瞳を見つめて綺麗な髪を一房、そっと触る。

「子供の頃に庭園でこうしたのを覚えてる？」

「ええ…覚えているわ…」

「この世界で僕のことを子供の頃からよく知っている女の子はクレアだけだよ」

僕とクレアにはこんなにたくさんの思い出があるよ。
８歳の頃から僕の近くにいた大切な人。
お互いに好きな趣味や好みの味、僕の好きな音楽のこと、クレアはたくさん知ってるよ。

だから…泣かないで。
笑顔で僕の側にずっと一緒にいてほしい。

「ルカ……」

クレアの大きな瞳から涙がポロリと零れた。


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