転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ～一途な恋の音色～

騒がしい教室から出ると、廊下を通っていたノア様とバッタリと会った。

「なあに？ずいぶん騒がしいクラスだね」

玲お兄ちゃんとそっくりな顔で不機嫌そうに顔を歪める。
笑うと可愛い顔なのに、性格は違うようだ。
ノア様の方がひねくれた感じだな。

「ごめんね。新しいクラスメイトがちょっとね」

「ふぅん。君のクラスの天然無自覚王子様に何かしたのかな？さっき走って行ったでしょ？」

廊下の壁に寄り掛かって楽しそうに笑う。

「ふっ！天然無自覚王子様って。まあ、そうだけどさ」

今までは玲お兄ちゃんのイチオシ堂に行った時に、店に来ていたノア様にたまに会うくらいだったけど、こんな性格だったんだな。
ちょっとおもしろいヤツだな。

カラーン！

授業が始まる合図の鐘の音が鳴る。
ちょうど隣の教室に入ろうとしていた生徒がノア様に声を掛けた。

「ノア、授業始まるよ。先生もう近くまで来てるよ」

「サミュエル、分かった」

ノア様がクラスメイトに返事をしたあとに僕の方を見た。

「じゃあね」

手をヒラヒラと振って教室に戻って行った。

「あっ！琉生！琉翔がどうかしたの！？」

真璃愛が教室から出て僕に話掛けた時に、真璃愛のクラスの先生が来た。

「あなた達、もう授業が始まりますよ。教室に入ってくださいね」

真璃愛がチッ！と伯爵令嬢らしくない顔をした。

「あとで教えてね！琉生！」

悔しそうに教室に戻って行った。

僕も静かになっている自分の教室に戻る。
カチャリと扉を開けて教室に入ると注目を浴びた。
なぜか皆が顔を赤くしている。

「？」

何だろう？
皆が小声で何かを言い始めた。

『ルイ様の子猫ちゃんって！』
『羨ましわ！！』
『あんなセリフを言うヤツが普通なわけがないよな』

よく聞こえないけど気にしないで自分の席に向かう。
前の席のヘンリー様と目が合うと、彼はクスクスと笑っていた。

教室の中央の席のふたりはまだ帰って来ていない。
ポッカリと誰も座っていない席は、今日の最後の授業が終わるまでそのままだった。

そして、天然無自覚王子様の双子はその素質を持っているのだが、気づいていないのは本人達だけであった。