愛人家
「嘘じゃん。見えない何かでわたしを突き飛ばせばよかったでしょ。どうしてパパ自身が助けるのよ……」

 わたしの声は徐々に小さく震えて、視界も何故かボヤけて見える。

「考えるより先に体が動いちゃったな。僕は大丈夫だから、泣かないで。僕の愛しい、子……」

 そう言うとパパは目をつぶり、何も言わなくなった。

「……パパ? お願い、目を覚まして」

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