「大好き♡先輩、お疲れ様です♡」溺愛💕隣りのわんこ系男子!
第12話 「先輩、お疲れ様です♡」7
私は、驚きと感動に包まれていた。
それからすぐに、ちょっぴりへこんでます。
――城ヶ崎君の初恋の相手が、私だったなんて。
私は城ヶ崎君から明かされた事実に驚いていた。
ここは城ヶ崎君のおうち。
体調が悪かった城ヶ崎君のお見舞いにやって来たんだけど……。
「私が初恋の相手!? びっくりした。それからごめん、なんだか申し訳ないような、恐れ多いような……」
「えっ? どうして先輩がへこむんです」
「だって再会して……がっかりしなかった?」
「しませんよ。ますます可愛くなってて、綺麗になってて。僕は先輩に見惚れました」
「じょ、城ヶ崎君、甘すぎ。恥ずかしいよ」
「だってほんとのことだもん」
城ヶ崎君の手が伸びてきて私の頬に触れる。
柔らかくて優しい笑顔、太陽みたいにあたたかな城ヶ崎君の微笑みが眩しい。
あー、今日一日会社で城ヶ崎君の笑顔が見られなくて寂しかったんだって、認識する。
「あの……女の子におんぶされて恥ずかしかったから――。なかなか言えなかったんです」
「ごめんね。年頃の男の子にすることじゃなかったよね」
「いえ、僕が悪いだけです。子供のくせに変なプライド持ってて。……でも嬉しかったんですよね」
「私っ。今はさすがに城ヶ崎君をおんぶ出来ないだろうから安心して」
「ふふっ。これからは先輩を僕がおんぶしたりお姫様抱っこする番ですよ」
城ヶ崎君、お姫様抱っこは何度もしてくれてるよね。
う〜ん、照れるな。
でも――、そっかあ。
中学生の時に参加した交流地域運動会、覚えてる。
写真もアルバムに貼ってあるし。
私は中学校で保健委員だったので、そのまま運動会でも保健係に先生に指名されたんだっけ。
あの日は、数日前に病院から退院してきたばかりのお母さんが張り切ってお弁当を作ってくれたんだ。
だから、よく覚えてる。
私と妹の大好物ばかりを詰め込んだお弁当、久しぶりのお母さんの手作りの料理が嬉しくって。
アルバムにはお弁当の写真も貼ってあるの。
「そっか……。城ヶ崎君は私との思い出を大切にしてくれてたんだね」
「そうですよ。先輩にまた会えたら、また恋してしまったんです。責任取ってくださいよね」
「せ、責任って」
「いたいけな少年のハートをがっつり掴んで盗んでいったんですから」
城ヶ崎君の顔が近づいてくる。
早まる鼓動、ドキドキしかない。
キ、キス、されちゃう?
「ところで先輩」
「えっ?」
「僕がいない間に、常盤社長に口説かれたりしませんでしたか?」
す、鋭い!
城ヶ崎君は鋭いです。
「そそそ、それはナイヨー。ソンナコトナカッタヨー」
「先輩、棒読みですよ。めっちゃ怪しいですね、だれが聞いてもバレバレですよね」
「う〜ん、……もう城ヶ崎君には嘘つけないな。そうです、白状すると常盤社長から告白はされた……かなあ。でも好きとかっていうより、立候補したいって言ってたような」
「立候補?」
「ええっ、がっつり面と向かって告白、宣言されてるじゃないですか!」
「そそ、そーみたい?」
城ヶ崎君は固まってる。
話には続きがあるけど、この先はとてもじゃないけど言えない。
だって常盤社長ってば、私とキスしたことがあるって言ってたんだけど。
思い出せない。
思い出そうとしてるのに、そんな大事なことが思い出せないなんて。
常盤社長が私とキスしてるなら、中山君の前になるだろうから、ファーストキスになっちゃうと思う。
そんな記念の人生初めてのキスを覚えていないなんて致命的じゃない?
私、これまでの人生においてちゃんとキスしたのって――、元カレの中山君とたぶん好きだけど付き合えない城ヶ崎君しかいないの。
付き合ったのは中山君が初めてだったし。
可愛い後輩クンの城ヶ崎君は慕ってくれてるから私も心を許しちゃって、キスされて。友達以上恋人未満っぽくなってるけど。
あとは……う〜ん。
両親によく言われたのは、ファーストキスはご近所の幼なじみの男の子だったって話。
だけど私も相手の子も年は幼稚園に通ってる頃ぐらいだったらしいから、ノーカウントだよね?
あとはうーんと……。
大学生のころに、サークルで時々会った舜《しゅん》先輩にほっぺとおでこにチュッてされたことがあるぐらい……。
それは唇ではないけど、キスに入るのかな。
たしか参加した夏の合宿キャンプで、……星空の下で。
突然だった。
付き合ってもいないし、そんな雰囲気でもなかった。
だって舜先輩は恋愛なんか興味ありませんって感じで。わいわいキャッキャと騒がしい女の子たちが苦手だって言っていたし。
舜《しゅん》先輩……、えっ? しゅんって……。
常盤社長の下の名前、そういや同じ舜《しゅん》だったっけ!?
あ、――すとんと腑に落ちた。
……思い出した。
というか、一致しない人と人が一致して重なった。
キスしたなんて意味深に言ってたけど、あのキスは常盤社長が……舜先輩が一方的に勝手にしてきたんじゃないですかっ。
私に隙があったのかな……。
偶然の出会い、偶然の再会が二人もあったなんて。
どうなってるの? 私の人生は!
城ヶ崎君と常盤社長――。
こんなことってある?
思い出の中の舜先輩は、物静かな人でほわほわと優しい雰囲気。
今みたいに自信満々なオーラも出してなくって、常盤社長とはまるで別人だよ。
信じられない。
舜先輩と常盤社長がすぐにはイコールで繋がるわけないじゃない。
あまりにも違う、まるで別人。
同一人物だとは思わなかった。
常盤社長はサラサラな前髪をきちっと上げてキメて、眼光鋭く厳しい表情ばかりだけど。
舜先輩はウエーブがかったくせっ毛が顔にかかってて、目を半分覆ってた感じだった。
性格も私の中の二人は、まあったく違うよ。
常盤社長は四角でガチガチに堅い鉄壁で、舜先輩は丸くて柔らかいマシュマロって印象だもん。
……少しは憧れの気持ちがあったと思うけど。
恋してたかといえば、それは違う気がする。
舜先輩はドキドキよりも安心感があって優しかった。
私は舜先輩に同性の友達に近しい親しみを持ってた。
「常盤社長のこと、考えてるの? 先輩」
「えっ。……ち、違うよ」
――違くないけど。
「あの〜。僕さ、すっごい嫉妬してるんですけど。野坂先輩、心ここにあらずじゃないですか。常盤社長のことがそんなに気になる?」
「そんなんじゃないよ。ただ前に会ったことがあるって言われたから思い出してただけ」
城ヶ崎君は拗ねた顔。悲しそうでわずかにむっとした表情を滲ませてる。
口づけ寸前で、止まる距離がもどかしい。
でも、キスをおねだりするなんてそんなこと出来ないよ。
私は城ヶ崎君の彼女でもなんでもないもの。
「目の前にいるのは僕なのに、常盤社長のことばかり考えて欲しくないな」
あっ――。
私、常盤社長にまんまと作戦にはめられたのだろうか。
『俺のこと考える時間が増えるでしょ?』
あの人、私を手のひらで転がしてる。
どこからどこまで? 計算高い人だなあ。
「ずっと意地を張って僕を拒むくせに、先輩は常盤社長なら受け入れるんですか?」
「そんな……。私、私は常盤社長に特別な感情はないもの」
「野坂先輩、あの人のことが気になってるんでしょ?」
「……好きとかで気になってるんじゃないもん」
ただ、誰だか気になっただけ。
キスしたとか言われて、動揺しただけ。
常盤社長の正体が知りたかった。
城ヶ崎君にせっかく会えてるのに、常盤社長のことばかり考えてるだなんて。……城ヶ崎君に失礼だよね。
城ヶ崎君が私の肩をそっと掴む。
私は城ヶ崎君の真剣な瞳から逃れられない。
「僕は先輩との関係が宙ぶらりんだと、……いい加減辛いです」
「城ヶ崎君……」
「僕のこと、好きですか?」
「えっ……」
「聞かせてください。先輩の正直な真実《ほんと》の気持ち」
もう、観念するしかない。
城ヶ崎君にこんな顔をさせて、胸が苦しいもの。
弄んでるわけでも不誠実な気持ちで城ヶ崎君に接しているわけでもないけれど。
言うしかない。
城ヶ崎君に告げるしかない。
今夜、私は後輩クンへの想いを正直な気持ちを暴露します。
ええ、お伝えしますとも。
気合と覚悟を決める。
深く息を吸う。
「私は……」
城ヶ崎君の不安そうな顔が瞳が私を見つめている。
綺麗な瞳が揺れている。
「私は城ヶ崎君が好き」
うん。
大好き。
もう、だめ。誤魔化せない。
それからすぐに、ちょっぴりへこんでます。
――城ヶ崎君の初恋の相手が、私だったなんて。
私は城ヶ崎君から明かされた事実に驚いていた。
ここは城ヶ崎君のおうち。
体調が悪かった城ヶ崎君のお見舞いにやって来たんだけど……。
「私が初恋の相手!? びっくりした。それからごめん、なんだか申し訳ないような、恐れ多いような……」
「えっ? どうして先輩がへこむんです」
「だって再会して……がっかりしなかった?」
「しませんよ。ますます可愛くなってて、綺麗になってて。僕は先輩に見惚れました」
「じょ、城ヶ崎君、甘すぎ。恥ずかしいよ」
「だってほんとのことだもん」
城ヶ崎君の手が伸びてきて私の頬に触れる。
柔らかくて優しい笑顔、太陽みたいにあたたかな城ヶ崎君の微笑みが眩しい。
あー、今日一日会社で城ヶ崎君の笑顔が見られなくて寂しかったんだって、認識する。
「あの……女の子におんぶされて恥ずかしかったから――。なかなか言えなかったんです」
「ごめんね。年頃の男の子にすることじゃなかったよね」
「いえ、僕が悪いだけです。子供のくせに変なプライド持ってて。……でも嬉しかったんですよね」
「私っ。今はさすがに城ヶ崎君をおんぶ出来ないだろうから安心して」
「ふふっ。これからは先輩を僕がおんぶしたりお姫様抱っこする番ですよ」
城ヶ崎君、お姫様抱っこは何度もしてくれてるよね。
う〜ん、照れるな。
でも――、そっかあ。
中学生の時に参加した交流地域運動会、覚えてる。
写真もアルバムに貼ってあるし。
私は中学校で保健委員だったので、そのまま運動会でも保健係に先生に指名されたんだっけ。
あの日は、数日前に病院から退院してきたばかりのお母さんが張り切ってお弁当を作ってくれたんだ。
だから、よく覚えてる。
私と妹の大好物ばかりを詰め込んだお弁当、久しぶりのお母さんの手作りの料理が嬉しくって。
アルバムにはお弁当の写真も貼ってあるの。
「そっか……。城ヶ崎君は私との思い出を大切にしてくれてたんだね」
「そうですよ。先輩にまた会えたら、また恋してしまったんです。責任取ってくださいよね」
「せ、責任って」
「いたいけな少年のハートをがっつり掴んで盗んでいったんですから」
城ヶ崎君の顔が近づいてくる。
早まる鼓動、ドキドキしかない。
キ、キス、されちゃう?
「ところで先輩」
「えっ?」
「僕がいない間に、常盤社長に口説かれたりしませんでしたか?」
す、鋭い!
城ヶ崎君は鋭いです。
「そそそ、それはナイヨー。ソンナコトナカッタヨー」
「先輩、棒読みですよ。めっちゃ怪しいですね、だれが聞いてもバレバレですよね」
「う〜ん、……もう城ヶ崎君には嘘つけないな。そうです、白状すると常盤社長から告白はされた……かなあ。でも好きとかっていうより、立候補したいって言ってたような」
「立候補?」
「ええっ、がっつり面と向かって告白、宣言されてるじゃないですか!」
「そそ、そーみたい?」
城ヶ崎君は固まってる。
話には続きがあるけど、この先はとてもじゃないけど言えない。
だって常盤社長ってば、私とキスしたことがあるって言ってたんだけど。
思い出せない。
思い出そうとしてるのに、そんな大事なことが思い出せないなんて。
常盤社長が私とキスしてるなら、中山君の前になるだろうから、ファーストキスになっちゃうと思う。
そんな記念の人生初めてのキスを覚えていないなんて致命的じゃない?
私、これまでの人生においてちゃんとキスしたのって――、元カレの中山君とたぶん好きだけど付き合えない城ヶ崎君しかいないの。
付き合ったのは中山君が初めてだったし。
可愛い後輩クンの城ヶ崎君は慕ってくれてるから私も心を許しちゃって、キスされて。友達以上恋人未満っぽくなってるけど。
あとは……う〜ん。
両親によく言われたのは、ファーストキスはご近所の幼なじみの男の子だったって話。
だけど私も相手の子も年は幼稚園に通ってる頃ぐらいだったらしいから、ノーカウントだよね?
あとはうーんと……。
大学生のころに、サークルで時々会った舜《しゅん》先輩にほっぺとおでこにチュッてされたことがあるぐらい……。
それは唇ではないけど、キスに入るのかな。
たしか参加した夏の合宿キャンプで、……星空の下で。
突然だった。
付き合ってもいないし、そんな雰囲気でもなかった。
だって舜先輩は恋愛なんか興味ありませんって感じで。わいわいキャッキャと騒がしい女の子たちが苦手だって言っていたし。
舜《しゅん》先輩……、えっ? しゅんって……。
常盤社長の下の名前、そういや同じ舜《しゅん》だったっけ!?
あ、――すとんと腑に落ちた。
……思い出した。
というか、一致しない人と人が一致して重なった。
キスしたなんて意味深に言ってたけど、あのキスは常盤社長が……舜先輩が一方的に勝手にしてきたんじゃないですかっ。
私に隙があったのかな……。
偶然の出会い、偶然の再会が二人もあったなんて。
どうなってるの? 私の人生は!
城ヶ崎君と常盤社長――。
こんなことってある?
思い出の中の舜先輩は、物静かな人でほわほわと優しい雰囲気。
今みたいに自信満々なオーラも出してなくって、常盤社長とはまるで別人だよ。
信じられない。
舜先輩と常盤社長がすぐにはイコールで繋がるわけないじゃない。
あまりにも違う、まるで別人。
同一人物だとは思わなかった。
常盤社長はサラサラな前髪をきちっと上げてキメて、眼光鋭く厳しい表情ばかりだけど。
舜先輩はウエーブがかったくせっ毛が顔にかかってて、目を半分覆ってた感じだった。
性格も私の中の二人は、まあったく違うよ。
常盤社長は四角でガチガチに堅い鉄壁で、舜先輩は丸くて柔らかいマシュマロって印象だもん。
……少しは憧れの気持ちがあったと思うけど。
恋してたかといえば、それは違う気がする。
舜先輩はドキドキよりも安心感があって優しかった。
私は舜先輩に同性の友達に近しい親しみを持ってた。
「常盤社長のこと、考えてるの? 先輩」
「えっ。……ち、違うよ」
――違くないけど。
「あの〜。僕さ、すっごい嫉妬してるんですけど。野坂先輩、心ここにあらずじゃないですか。常盤社長のことがそんなに気になる?」
「そんなんじゃないよ。ただ前に会ったことがあるって言われたから思い出してただけ」
城ヶ崎君は拗ねた顔。悲しそうでわずかにむっとした表情を滲ませてる。
口づけ寸前で、止まる距離がもどかしい。
でも、キスをおねだりするなんてそんなこと出来ないよ。
私は城ヶ崎君の彼女でもなんでもないもの。
「目の前にいるのは僕なのに、常盤社長のことばかり考えて欲しくないな」
あっ――。
私、常盤社長にまんまと作戦にはめられたのだろうか。
『俺のこと考える時間が増えるでしょ?』
あの人、私を手のひらで転がしてる。
どこからどこまで? 計算高い人だなあ。
「ずっと意地を張って僕を拒むくせに、先輩は常盤社長なら受け入れるんですか?」
「そんな……。私、私は常盤社長に特別な感情はないもの」
「野坂先輩、あの人のことが気になってるんでしょ?」
「……好きとかで気になってるんじゃないもん」
ただ、誰だか気になっただけ。
キスしたとか言われて、動揺しただけ。
常盤社長の正体が知りたかった。
城ヶ崎君にせっかく会えてるのに、常盤社長のことばかり考えてるだなんて。……城ヶ崎君に失礼だよね。
城ヶ崎君が私の肩をそっと掴む。
私は城ヶ崎君の真剣な瞳から逃れられない。
「僕は先輩との関係が宙ぶらりんだと、……いい加減辛いです」
「城ヶ崎君……」
「僕のこと、好きですか?」
「えっ……」
「聞かせてください。先輩の正直な真実《ほんと》の気持ち」
もう、観念するしかない。
城ヶ崎君にこんな顔をさせて、胸が苦しいもの。
弄んでるわけでも不誠実な気持ちで城ヶ崎君に接しているわけでもないけれど。
言うしかない。
城ヶ崎君に告げるしかない。
今夜、私は後輩クンへの想いを正直な気持ちを暴露します。
ええ、お伝えしますとも。
気合と覚悟を決める。
深く息を吸う。
「私は……」
城ヶ崎君の不安そうな顔が瞳が私を見つめている。
綺麗な瞳が揺れている。
「私は城ヶ崎君が好き」
うん。
大好き。
もう、だめ。誤魔化せない。