「大好き♡先輩、お疲れ様です♡」溺愛💕隣りのわんこ系男子!
第16話 「先輩、お疲れ様です♡」8
私は会社の後輩クンから呼び出され、ランチタイムに会社の憩いの庭に来ていま〜す。
「野坂先輩、お疲れ様です♡はい、僕の愛情手作り弁当だよ」
後輩クンは私の手に、可愛いくまちゃん柄の巾着型のランチバッグごとお弁当を載せてくれてます。
後輩クンの名前は城ヶ崎悠太君。
なんか、キョロキョロしてる。
どうしたのかな〜?
「あっ、ありがとう! ……どうしたの? 城ヶ崎君。そんなに辺りを伺うようにキョロキョロしちゃって」
「あっ、だって先輩……」
城ヶ崎君からのお弁当のお返しに、私からも手作りお弁当を渡す。
私のお弁当はうさぎちゃん柄の巾着型のランチバッグに入れてきました。
二人でお弁当を渡し合ったりしちゃう、今日は木曜日。
な、なにやってるのかって?
捨てられた子犬みたいな瞳で見てくる城ヶ崎君に頼まれ、成り行きでお弁当の交換会なのです。
こういうの良いよね。
でもなんか照れちゃうなあ。
また、城ヶ崎君はキョロキョロしてる。
「なあに? 誰か来るの?」
「いや、むしろ逆です。僕は誰か来たら困るんです。大体ですね、最近の傾向で邪魔が入るのは僕が先輩とイチャイチャしようかな〜って時なんですから」
「城ヶ崎君、イチャイチャって……」
「ふ〜っ、誰も来なさそうですね。野坂先輩ねらいの常盤社長とか先輩に告白しようと目論むどっかの部署の課長やら部長とか……。うんっ、いないな? 良かったあ」
「ふふっ、気にし過ぎだよ。そんなに私、モテないもの」
「な、何言ってるんですか! ふーっ、先輩は自覚がないんだから。先輩はすっごく可愛いんだから気をつけて下さいよねっ。ああ、危険ですよ、男は狼なんです。……まあったくぅ! 先輩はモテてるのが全然分かってないんですから。あーっ。心配です、僕は。野坂先輩は油断と隙ばかりですよ」
「油断と隙ばかりって……」
「……ほら」
城ヶ崎君が私の手首を掴み引き寄せる。「あっ」と言うか言わないかの間に私は城ヶ崎君の胸のなかにすっぽりとおさまってしまった。
ドキドキ、ドキン……。
こんな場所《トコ》で城ヶ崎君に抱き寄せられてしまってる。
「ほら? 先輩は油断と隙ばかりだ」
「ふえっ……」
私の耳元にかかる城ヶ崎君の甘いテノールの囁きと吐息がくすぐったい。
城ヶ崎君の心地よい声が私の胸を震わすように響いて体が熱くなる。
城ヶ崎君って童顔で。うるうるキラキラな大きな瞳が、好奇心いっぱいで可愛いワンコみたいな系男子なのに。
腕捲くりすると予想以上に逞しい腕、厚い胸板……。
脱いだら凄そう……って、ななな何をふしだらな想像しちゃったの、私?
それもこれも朝イチから、得意先への見積書の提出日を間違えててテンパった部長が、全部私に丸投げしてきたからよ。
今日の今日に仕上げるために、各部署に頭を下げて回らなければならないなんて。
……なんとか間に合ったけどね。
思わず城ヶ崎君の胸に顔をうずめると、あったかくてとっても安心する。
ずっとドキドキしてるのに……、たちまち癒やされてしまいます。
ほおわぁ〜って思わず吐息が漏れてしまい、私は慌てて城ヶ崎君から離れようとした……のに。
「先輩、離れないで?」
「きゃっ……」
ぎゅうっ。
もっとしっかり抱きしめられてしまう。
「……城ヶ崎君。ねえ? 城ヶ崎君。お弁当食べる時間がなくなっちゃうよ?」
「うん……。先輩、もうちょっとだけ抱き締めさせて」
「……もう、城ヶ崎君たら。あとちょっとだけだよ?」
本当は私もずっとこうしていたいとか思っちゃっている。
「大好きだよ、先輩」
その時に見上げたら、城ヶ崎君の私を見つめる真っ直ぐな瞳と視線がぶつかった。
……城ヶ崎君の指がそっと近づいて私の頬をなぞり、あごに触れる。
胸の鼓動のドキドキが止まらない。
私のと、城ヶ崎君の胸が打つ音が早くなる。
「先輩……キスさせて」
「えっ、う〜ん……。そ、それはだぁめ」
「ダメなの? そんな蕩《とろ》けそうな可愛い顔をしてるのに?」
ううっ、どうしよう?
城ヶ崎君のお願いしてくるちょっと拗ねたようなしょんぼり顔に弱いんだよね。
やだっ、私は疲れているから、癒やしを求めてキスにオッケーを出しそうになっちゃうんだ、きっと。……たぶん、そう。
この胸の中に抱きしめられたままでいたい。朝まで腕枕されたいとかとか、あらぬ妄想を抱いちゃうのは、部長に押し付けられた飛び込み業務に頑張りすぎて一気に疲労感が襲ってきたからよ。
「先輩、好き。大好きだよ。僕は先輩のことが大好きなんだからね」
何度も重ねるように甘く「好きだよ」って告げてくれる言葉が、私を包んでほわほわとあったかくなる。
頭がぽわーんとしてきて、私は城ヶ崎君にますます甘えたくなる。
同じ部署の後輩の城ヶ崎君……。
「好きだ、好きだから。お願い、僕を信じて? 怖がらないで、僕とちゃんと付き合って関係を進めようよ、野坂先輩」
「城ヶ崎君……」
城ヶ崎君の唇が近づいてくる。
触れそうで触れない距離のまま、じっと止まった。
「不安なんだ。僕は先輩、あなたが魅力的すぎて……いつでも誰かに奪われるんじゃないかって怯えてる」
付き合ってもいいよって言おう、茜音。
もう覚悟を決めて。
向き合おう。
城ヶ崎君とちゃんと付き合ってしまえば、彼を不安にさせることも少なくなるはずだから。
普段は几帳面で真面目でくだけない性格の城ヶ崎君だったのに、一緒に甘い時間を過ごすたびに意外な一面を知れる。
仕事に励む職場での彼は格好いいのに、二人っきりだと甘えたがりな可愛いワンコ系男子。
私の前では違うって、……実はすごく嬉しい。
私のことを特別って思ってくれてるって感じる。
だから私からも城ヶ崎くんを信じて、城ヶ崎君のことが好きって伝えたら良いんだよね。
……城ヶ崎くんなら、浮気したりしないだろうし。
でもやっぱり……言えない。
だめだなあ、臆病な私。
この城ヶ崎君のぬくもりはたしかで、本物で。
きっと城ヶ崎君の言ってくれてる「好き」も今は本心で本物だと思う。
あったかいな……、城ヶ崎君。
「……今、先輩。早くキスしたいって顔してる」
「あわわわっ……。私ってばそんな顔してるっ?」
「してる」
「……んっ」
軽く口づけられた城ヶ崎君の唇は柔らかくてあったかい。
拒否できるほどの理由もなくて、止めてって言えるほどの感情も出て来ない。
むしろ、城ヶ崎君からのキスが気持ちよくて溶けてしまいそうで、受け入れてしまう。
こんなに口づけがうっとりするほど痺れるのは、私も城ヶ崎君が好きだからって気づいてる。
心のどこかがチクチク痛むほどに。
私、城ヶ崎君のことが――
どんどん好きになってしまうの。
「……ランチタイムじゃなかったら先輩のこと襲ってたかも」
「じょ、城ヶ崎君っ? もうっ、からかわないで。さあ、早くお弁当食べよう。私ね、城ヶ崎君が作ってくれたお弁当を食べるの、すっごく楽しみだな〜」
「野坂先ぱ〜い」
一度離れかけたのに城ヶ崎君が私の腕を絡め取って引き寄せられ、私は城ヶ崎君の胸に頬がついた。
「僕も先輩の手作り愛情弁当が楽しみです」
「ありがとう。でもね、こんな体勢じゃ御飯が食べられないよ、城ヶ崎君?」
「ちぇっ。僕は野坂先輩にくっついていたいのに……」
「『ちぇっ』とか言われましても……」
「じゃあじゃあ、『あーん』って食べさせ合いっこしましょうよ」
「『あーん』は時間がある時にね、城ヶ崎君。けっこうお昼休憩時間、過ぎちゃってるよ」
「あ〜、ほんとだ。先輩と一緒に過ごしてると楽しいから時間がすぎるのがあっという間で困りもんですね。時が止まらないかなってけっこう本気で願っちゃいますよ。野坂先輩『あーん』って食べさせ合うの、約束ですよ?」
「はいはい」
「もう……。子供扱いしてませんか? 僕は先輩ともっとイチャイチャしたかったなあ」
城ヶ崎君はほっぺを膨らませて不満そうだったけど……。
私と城ヶ崎君がようやくお弁当をランチバックから取り出し、食べ始めようとふたを開けようとした時――。
私の知らない声が聴こえた。
「♪見ーちゃった、見ーちゃった! いーけないんだ、いけないんだ。常盤社長に言ってやろう♪」
私と城ヶ崎君は顔を見合わせる。
「えっ!? だ、誰?」
「誰です? 覗き見してんの」
子供の頃に男子が面白がって歌っていたメロディが聴こえた。
そして歌った後、おかしそうに笑う声がわははと庭に響いてた。
「野坂先輩、お疲れ様です♡はい、僕の愛情手作り弁当だよ」
後輩クンは私の手に、可愛いくまちゃん柄の巾着型のランチバッグごとお弁当を載せてくれてます。
後輩クンの名前は城ヶ崎悠太君。
なんか、キョロキョロしてる。
どうしたのかな〜?
「あっ、ありがとう! ……どうしたの? 城ヶ崎君。そんなに辺りを伺うようにキョロキョロしちゃって」
「あっ、だって先輩……」
城ヶ崎君からのお弁当のお返しに、私からも手作りお弁当を渡す。
私のお弁当はうさぎちゃん柄の巾着型のランチバッグに入れてきました。
二人でお弁当を渡し合ったりしちゃう、今日は木曜日。
な、なにやってるのかって?
捨てられた子犬みたいな瞳で見てくる城ヶ崎君に頼まれ、成り行きでお弁当の交換会なのです。
こういうの良いよね。
でもなんか照れちゃうなあ。
また、城ヶ崎君はキョロキョロしてる。
「なあに? 誰か来るの?」
「いや、むしろ逆です。僕は誰か来たら困るんです。大体ですね、最近の傾向で邪魔が入るのは僕が先輩とイチャイチャしようかな〜って時なんですから」
「城ヶ崎君、イチャイチャって……」
「ふ〜っ、誰も来なさそうですね。野坂先輩ねらいの常盤社長とか先輩に告白しようと目論むどっかの部署の課長やら部長とか……。うんっ、いないな? 良かったあ」
「ふふっ、気にし過ぎだよ。そんなに私、モテないもの」
「な、何言ってるんですか! ふーっ、先輩は自覚がないんだから。先輩はすっごく可愛いんだから気をつけて下さいよねっ。ああ、危険ですよ、男は狼なんです。……まあったくぅ! 先輩はモテてるのが全然分かってないんですから。あーっ。心配です、僕は。野坂先輩は油断と隙ばかりですよ」
「油断と隙ばかりって……」
「……ほら」
城ヶ崎君が私の手首を掴み引き寄せる。「あっ」と言うか言わないかの間に私は城ヶ崎君の胸のなかにすっぽりとおさまってしまった。
ドキドキ、ドキン……。
こんな場所《トコ》で城ヶ崎君に抱き寄せられてしまってる。
「ほら? 先輩は油断と隙ばかりだ」
「ふえっ……」
私の耳元にかかる城ヶ崎君の甘いテノールの囁きと吐息がくすぐったい。
城ヶ崎君の心地よい声が私の胸を震わすように響いて体が熱くなる。
城ヶ崎君って童顔で。うるうるキラキラな大きな瞳が、好奇心いっぱいで可愛いワンコみたいな系男子なのに。
腕捲くりすると予想以上に逞しい腕、厚い胸板……。
脱いだら凄そう……って、ななな何をふしだらな想像しちゃったの、私?
それもこれも朝イチから、得意先への見積書の提出日を間違えててテンパった部長が、全部私に丸投げしてきたからよ。
今日の今日に仕上げるために、各部署に頭を下げて回らなければならないなんて。
……なんとか間に合ったけどね。
思わず城ヶ崎君の胸に顔をうずめると、あったかくてとっても安心する。
ずっとドキドキしてるのに……、たちまち癒やされてしまいます。
ほおわぁ〜って思わず吐息が漏れてしまい、私は慌てて城ヶ崎君から離れようとした……のに。
「先輩、離れないで?」
「きゃっ……」
ぎゅうっ。
もっとしっかり抱きしめられてしまう。
「……城ヶ崎君。ねえ? 城ヶ崎君。お弁当食べる時間がなくなっちゃうよ?」
「うん……。先輩、もうちょっとだけ抱き締めさせて」
「……もう、城ヶ崎君たら。あとちょっとだけだよ?」
本当は私もずっとこうしていたいとか思っちゃっている。
「大好きだよ、先輩」
その時に見上げたら、城ヶ崎君の私を見つめる真っ直ぐな瞳と視線がぶつかった。
……城ヶ崎君の指がそっと近づいて私の頬をなぞり、あごに触れる。
胸の鼓動のドキドキが止まらない。
私のと、城ヶ崎君の胸が打つ音が早くなる。
「先輩……キスさせて」
「えっ、う〜ん……。そ、それはだぁめ」
「ダメなの? そんな蕩《とろ》けそうな可愛い顔をしてるのに?」
ううっ、どうしよう?
城ヶ崎君のお願いしてくるちょっと拗ねたようなしょんぼり顔に弱いんだよね。
やだっ、私は疲れているから、癒やしを求めてキスにオッケーを出しそうになっちゃうんだ、きっと。……たぶん、そう。
この胸の中に抱きしめられたままでいたい。朝まで腕枕されたいとかとか、あらぬ妄想を抱いちゃうのは、部長に押し付けられた飛び込み業務に頑張りすぎて一気に疲労感が襲ってきたからよ。
「先輩、好き。大好きだよ。僕は先輩のことが大好きなんだからね」
何度も重ねるように甘く「好きだよ」って告げてくれる言葉が、私を包んでほわほわとあったかくなる。
頭がぽわーんとしてきて、私は城ヶ崎君にますます甘えたくなる。
同じ部署の後輩の城ヶ崎君……。
「好きだ、好きだから。お願い、僕を信じて? 怖がらないで、僕とちゃんと付き合って関係を進めようよ、野坂先輩」
「城ヶ崎君……」
城ヶ崎君の唇が近づいてくる。
触れそうで触れない距離のまま、じっと止まった。
「不安なんだ。僕は先輩、あなたが魅力的すぎて……いつでも誰かに奪われるんじゃないかって怯えてる」
付き合ってもいいよって言おう、茜音。
もう覚悟を決めて。
向き合おう。
城ヶ崎君とちゃんと付き合ってしまえば、彼を不安にさせることも少なくなるはずだから。
普段は几帳面で真面目でくだけない性格の城ヶ崎君だったのに、一緒に甘い時間を過ごすたびに意外な一面を知れる。
仕事に励む職場での彼は格好いいのに、二人っきりだと甘えたがりな可愛いワンコ系男子。
私の前では違うって、……実はすごく嬉しい。
私のことを特別って思ってくれてるって感じる。
だから私からも城ヶ崎くんを信じて、城ヶ崎君のことが好きって伝えたら良いんだよね。
……城ヶ崎くんなら、浮気したりしないだろうし。
でもやっぱり……言えない。
だめだなあ、臆病な私。
この城ヶ崎君のぬくもりはたしかで、本物で。
きっと城ヶ崎君の言ってくれてる「好き」も今は本心で本物だと思う。
あったかいな……、城ヶ崎君。
「……今、先輩。早くキスしたいって顔してる」
「あわわわっ……。私ってばそんな顔してるっ?」
「してる」
「……んっ」
軽く口づけられた城ヶ崎君の唇は柔らかくてあったかい。
拒否できるほどの理由もなくて、止めてって言えるほどの感情も出て来ない。
むしろ、城ヶ崎君からのキスが気持ちよくて溶けてしまいそうで、受け入れてしまう。
こんなに口づけがうっとりするほど痺れるのは、私も城ヶ崎君が好きだからって気づいてる。
心のどこかがチクチク痛むほどに。
私、城ヶ崎君のことが――
どんどん好きになってしまうの。
「……ランチタイムじゃなかったら先輩のこと襲ってたかも」
「じょ、城ヶ崎君っ? もうっ、からかわないで。さあ、早くお弁当食べよう。私ね、城ヶ崎君が作ってくれたお弁当を食べるの、すっごく楽しみだな〜」
「野坂先ぱ〜い」
一度離れかけたのに城ヶ崎君が私の腕を絡め取って引き寄せられ、私は城ヶ崎君の胸に頬がついた。
「僕も先輩の手作り愛情弁当が楽しみです」
「ありがとう。でもね、こんな体勢じゃ御飯が食べられないよ、城ヶ崎君?」
「ちぇっ。僕は野坂先輩にくっついていたいのに……」
「『ちぇっ』とか言われましても……」
「じゃあじゃあ、『あーん』って食べさせ合いっこしましょうよ」
「『あーん』は時間がある時にね、城ヶ崎君。けっこうお昼休憩時間、過ぎちゃってるよ」
「あ〜、ほんとだ。先輩と一緒に過ごしてると楽しいから時間がすぎるのがあっという間で困りもんですね。時が止まらないかなってけっこう本気で願っちゃいますよ。野坂先輩『あーん』って食べさせ合うの、約束ですよ?」
「はいはい」
「もう……。子供扱いしてませんか? 僕は先輩ともっとイチャイチャしたかったなあ」
城ヶ崎君はほっぺを膨らませて不満そうだったけど……。
私と城ヶ崎君がようやくお弁当をランチバックから取り出し、食べ始めようとふたを開けようとした時――。
私の知らない声が聴こえた。
「♪見ーちゃった、見ーちゃった! いーけないんだ、いけないんだ。常盤社長に言ってやろう♪」
私と城ヶ崎君は顔を見合わせる。
「えっ!? だ、誰?」
「誰です? 覗き見してんの」
子供の頃に男子が面白がって歌っていたメロディが聴こえた。
そして歌った後、おかしそうに笑う声がわははと庭に響いてた。