「大好き♡先輩、お疲れ様です♡」溺愛💕隣りのわんこ系男子!

第4話 城ヶ崎君視点「先輩、今日も可愛いですね♡」1

「野坂先輩、お疲れ様です♡」
「あっ、お帰り、城ヶ崎君。城ヶ崎君の方こそ外回り大変だったでしょう? お疲れ様」

 今日も先輩は頑張ってるなあ。
 野坂先輩は上品な佇まいで、……すごくすごく綺麗な人だ。
 見た目も綺麗だけど、心も純粋で綺麗だ。
 先輩は喋ってみると可愛らしかったり美しかったりする。
 美人なのに、キュート。
 となりの席の僕はその横顔についつい見惚れてしまう。
 僕はこんな人に出会ったことがなかった。
 先輩の声は透き通るようだ。
 女神? 天使なの?
 僕はもう先輩の虜だ。
 先輩に骨抜きにされた男です。
 も〜、メロメロです。

 先輩は、面倒見が良くて困った人を放っておけない性格だ。
 損得考えない人間なんて、今どき居たんだ。そんな人、この世界にどれだけいんの? この世は合理化社会、自分のことだけな感じな人間ばかり、助けを求めたって知らないふりばかりされてきた。
 蹴落としたり騙したり、汚い大人ばかりだと思ってた。
 
 僕は先輩には入社当時から、助けてもらってきたんだ。
 情けないことに、僕はまだ何も知らずに戦う術を身に着けていない新入社員だった。
 部長がでかいミスをやらかして、危うく取引が潰れるところだったのを僕のせいにされたことがあった。
 野坂先輩は、僕を庇って全力で守ってくれた。
 しかも、取引先に直談判してミスを逆手に取って、大きい仕事をまとめてしまったのだ。

 僕はあの時思った。
 この人は信頼できる人だって。
 素敵だなあって。
 仕事をしてる野坂先輩はキラキラしてる。
 柔軟な発想、優れた機転力。
 野坂先輩はピンチを大きなチャンスに変えた。
 先輩に、憧れた。
 それに、もっともっと好きになった。

 僕は勉強しようと決めた。
 必死で仕事して、色んな人と関わって吸収して先輩の役に立ちたいと願った。
 実は陰キャな僕は、多くの人に話し掛けたり苦手だったけど、キャラ変することに決心したんだ。
 あの時もいつかも、助けてくれた先輩のために。
 役立ちたい、支えられるような男になりたい。


 たまに野坂先輩をからかうと焦っている声や顔がたまらなく愛しいだなんて言ったら、先輩に怒られるかな。

「そんな、警戒しないでくださいよ〜」
「だ、だって。城ヶ崎君って時々、わんこ系男子から狼男子にになるじゃない」
「隙がある先輩が悪いんですよ。僕以外にはその隙は見せちゃだめだ」

 僕がいじわるしたくなるのは、この人の照れて困った顔があまりにも可愛すぎるからだ。

 夕方定時すぎのうちの部署のオフィスフロアには、僕と野坂先輩の二人きり。
 なんてドラマチック、舞台は整っている。

 今日もお人好しな先輩は部長から面倒くさくて誰もやりたがらない仕事を押し付けられている。
 あーあ、僕がそばにいれば部長にひとこと嫌味を言って撃退させるのにさ。
 新入社員の頃とは違う。
 僕はずいぶん奥の手やら用意周到さも、部長を言い負かすだけの話術も培ってきた。
 経験も積んで、味方も作った。もう部長に口では負けない。
 いつかチャンスを作って、部長を思う存分こてんぱんに懲らしめてやろう。ふっふっふっ。
 汚い手ではなく、会社にどーんと利益をもたらし、業績をアップさせ部長を黙らしてやる。正当な手段でもってやっつけよう。
 先輩のために。
 野坂先輩のためになること、僕はなにかしたいんだ。

 僕は今時期は勉強と称して外回りメインにさせられてしまっているから、先輩と過ごす時間が少ない。

「先輩、あとで晩ごはんを一緒に食べに行きましょうね」
「私、いつ終わるか分からないから、もう城ヶ崎君帰って良いよ〜」

 野坂先輩の微笑みにキュンってなって、胸が苦しくて。
 その笑顔が僕だけに向けられてるとか思うと幸せすぎて死にそうだ。

「先輩を一人残して帰れるわけ無いじゃないですか。僕も手伝いますよ」
「大丈夫。城ヶ崎君が入社してくる前は一人で残業とかよくやったもん」
「はあ〜、先輩は全然分かっていませんね。野坂先輩は可愛すぎるんです。帰り道に悪い男に襲われでもしたらどうするんですか!」

 野坂先輩のびっくりした顔。
 見てたら不意にそのぷっくりとした唇にキスしたくなった。
 吸い寄せられる、抗えない野坂先輩の魅力の引力。

 僕は先輩の肩を掴んで拒否られる前に速攻でキスを仕掛けた。
 唇は想像通り、いやそれ以上に柔らかくて柔らかくて、それに甘い。

「じょ、城ヶ崎君! いいいい今、今。私にキスしたっ!? だめだよ、会社でこんな……」

 先輩の恥じらう顔は真っ赤で……。
 きゅうううんっ!
 か、可愛いっ!
 可愛すぎんだろっ、これは。
 この反応はやばすぎる。反則ですよ、野坂先輩。

 先輩は僕とのキスを嫌がってる風もないし、どちらかといえば嬉しそうに見えるのは僕の見間違いではなさそう。
 決して独りよがりの思いじゃないはずだ。
 自惚れでも見当違いでもないと思う。

 ああ、先輩にキスしちゃた。
 先輩と僕のファーストキスだね。

 んんー、感動、感激!

 もう一度したくなる。

 そっと優しく、つくかつかないかの軽いキスだけじゃ物足りないかな。
 野坂先輩の元カレは筋肉隆々な中山さんだし、荒々しい方が良いんだろうか。

「先輩、もう一度キスして良いですか?」
「い、良いわけないでしょう!」
「ちぇっ。先輩とチューしたいなあ」
「『ちぇっ』とか言われましても……困るよ」

 ねえ、先輩。
 僕はさ、勇気出したんだよ。
 これでも精一杯だ。

 あんな男とヨリを戻してもう二度と傷ついて泣いたりなんかして欲しくないんだ。

「僕なら、先輩を悲しみで泣かせない。傷つくような真似はしないよ。だって僕は野坂先輩が大好きだから。僕と付き合ってよ、先輩」
「……ごめん、城ヶ崎君。私、しばらくは恋愛できない。それに会社の人はちょっと。だって職場恋愛は別れたら辛すぎるから……」

 僕はたまらず先輩を抱きしめた。
 僕の腕の中にすっぽりとおさまる先輩の華奢な体は、微かに震えていた。

「僕がその恋、消したげる。上書きして塗り替えて。中山さんを想ってた気持ちの痕跡すら無くしたい」
「駄目だよ……。城ヶ崎君」
「強情だなあ、先輩は」

 何気に落ち込む。
 これは凹むよ。

 長期戦になりそうだね。
 でも、必ず僕との交際にうんって言ってもらいますよ、野坂先輩。

 あなたの笑顔が見たいから。
 大好きだから。

 僕のそばにいてほしいんだ。
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