「大好き♡先輩、お疲れ様です♡」溺愛💕隣りのわんこ系男子!
第5話 「先輩、お疲れ様です♡」4
私、後輩クンこと城ヶ崎君のお家にやって来てしまいました。
仕事帰りに……。
き、緊張しちゃうなあ。
「先輩、改めてお疲れ様で〜す。はい、どうぞ」
城ヶ崎君はとびっきりの笑顔を添えて冷え冷えのビールを私にくれた。
「ありがとう、お疲れ様。……きゃっ、冷た〜い」
私の頬に缶を一瞬当てて、城ヶ崎くんがニンマリとした笑みを浮かべてる。
「ごめんごめん、冷たかったですか? ってわざとです」
「じょ、城ヶ崎君〜。もぉ、子供みたい」
「えへっ。野坂先輩のびっくりした可愛い顔が見たくてちょっといたずらしちゃいました」
「……っ! 城ヶ崎君、さり気なく甘い」
ソファの後ろから城ヶ崎君が私をふんわりと抱きしめてくる。
城ヶ崎くんの抱擁は優しい。
まるでエアリーな羽毛布団な暖かさと心地良さが私を包んで……、ああ癒やされるぅ。
目を閉じてじっとその温もりに身を任せて。
いけない、人肌が恋しくて城ヶ崎君の密着した熱を堪能しちゃってる。
城ヶ崎君の腕、振りほどけないな。
しかも腕捲くりした腕が、普段隠されてる筋肉があわらになって逞しくてさらにドキドキ。
思わず頬をそっとつけてしまいたくなる。
このまま密着してる城ヶ崎君に身を委ねてしまいそう。
「先輩をもっと甘〜く攻めたいです。御飯食べたら、たくさん抱きしめさせてくださいね。僕、会社でいっぱい我慢しましたよ。早く大好きな先輩とイチャイチャしたいな」
「じょ、城ヶ崎君ったら。だ、だめだよ」
「なんでダメですか? ダメなんて言われたら僕、めっちゃへこんじゃいます」
「私たち、だってまだ付き合ってるわけではないし……」
城ヶ崎君はパッと手をほどいてそっと離れてく。
あっ、私……。寂しいかも。
温もりが冷めていく。
「だ・か・ら〜! 僕の方は付き合う気満々なんですって。どうしたら正式に付き合ってくれるんですかね、先輩は。そんなトコだけガードが堅いんだから」
そ、そうは言われましても。
付き合ったらお別れが辛いの。
こんなに好き好き言ってくれる城ヶ崎君だって付き合ったら飽きたりするんだ、たぶん。
「きちんと恋人になったら、先輩と僕はいくらでもイチャイチャべたべたし放題。先輩を蕩けるほど愛して独占出来るのに」
「……照れちゃうんですけど」
「照れた顔も可愛いですよ、先輩」
誘われままにほいほい着いてきて、お家に上がってしまい、良かったんでしょうか。
のこのこ来てしまったのは、城ヶ崎君は残業を手伝ってくれたし、お礼がしたいって思ったからなんだけど。
城ヶ崎君が『お礼してくれるなら、先輩僕の家に遊びに来てー。先輩と一緒にいられることが一番良いです』とか言ってくれちゃうから。
きゃあっ、甘い甘い。
すっかり城ヶ崎君のペースに飲み込まれてしまってる私。
それに……優しくてほんわかな癒やされ系の可愛い後輩、城ヶ崎君に誘われたらふらふら〜っと吸い寄せられてしまう。
城ヶ崎君くんのお家はすごく綺麗に片付いている。通された、無駄なものがない落ち着いたスタイリッシュな部屋。
城ヶ崎君の性格そのものを表しているって感じ。
城ヶ崎君の勢いに押されてしまったと言いますか、あの捨てられた子犬みたいな目でうるうるされて見つめられてしまうと弱いんだよなあ。
……どうも断れないんだよね〜。
「ねえ、城ヶ崎君、そういやビールなんて飲んで大丈夫なの?」
ちょっと心配になっちゃう。城ヶ崎君はたしかお酒がめっぽう弱いはず。
「ああ、僕は御飯を作り終えるまでは飲みませんよ〜。先輩は飲んで待ってて下さい。くつろいでね」
「私だけ飲むのはちょっと気が引けちゃうよ。なんか手伝う。お野菜切ろうか?」
私が私が立ち上がりかけると重なる言葉。
「大丈夫ですって。野坂先輩は今日はお客様ですからね。ゆっくり座っててくださいね」
「うーん、そう? いつでも手伝うから……」
追い打ちかけるように、そう言われてしまってはしょうがない。
私はエプロン姿の城ヶ崎君をじっと見つめてしまう。
「次は一緒に料理を作りましょうね〜。先輩のエプロン姿、すっごいそそられそうです」
「そそられるって……」
ポーッと頭から湯気が出ちゃいそう。
「さっ、とりあえずこちらをどうぞ」
城ヶ崎君がおつまみにって出してくれたトマトのカプレーゼ。それとサーモンや生ハムにアボカドのピンチョスがお洒落〜。美味しそう。
「ありがとう」
口数が少なくなってしまうのは、城ヶ崎君が知らず知らずのうちに私の心に入り込んでくるから。
――城ヶ崎君を見ていたいな。
「そうそう、最近はすこおしだけ飲めるようになったんですよ、僕。先輩と一緒に飲んでみたくって」
「城ヶ崎君……」
「お酒が飲めたらね、先輩をちょっと大人なバーとか連れて行けるかな〜って思ったんだ」
きゅうぅぅ〜ん♡
な、なに、この急な不意打ちキュン!
それに城ヶ崎の笑顔が可愛すぎるぅ。
すごい。笑顔が、城ヶ崎君がキラッキラだ。
眩し〜い!
「ところで先輩」
「な、なあに?」
城ヶ崎君の顔がちょっとふくれっ面になってる。
「さっき買い出しに行ったスーパーで、僕がほんの少し目を離した隙に、出会ったばかりのどこの誰かも分からない馬の骨にナンパされてときめいたりしませんでしたか?」
「あ、あれはただ道を聞かれて……」
「先輩ってチャラチャラしたいかにもホスト風の金髪男が好みなんですか? ……僕も髪染めてイメチェンしようかな」
「ち、違うよ。道を教えただけだし」
「あーれー? その後『お姉さん、お礼したいなあ。良かったら俺と茶〜しない』とか言われてませんでしたか?」
「それは言われましたけれども」
「世間一般にああいうのをナンパっていうんですよ。知らなかったんですか? ……ううっ先輩は可愛すぎる、無防備すぎる。もっと男を疑わくっちゃ。すぐさまキツく断らないと」
「私、お茶のお誘い、丁重に申し出を却下するつもりだったのよ。だっ、だけど城ヶ崎君が来て鬼の形相で『僕の連れです』って」
「ふふっ。警戒してくださいね、僕以外の男には。じゃないと……」
「じゃないと?」
「こんなことされちゃいますよ」
城ヶ崎君の唇がサッと私の唇に触れる。
すぐに離れたのに残る感触、柔らかくて、熱い熱を感じた。
「先輩、隙がありすぎ!」
「もぉ城ヶ崎君っ」
「ねえ、もう一回良いですか?」
ち、近いよ。
――城ヶ崎君。
潤んだ瞳、息がかかるほど近づく城ヶ崎君と私。
ドキッ……ドキドキ。
「先輩、黙ってるなら……。僕は肯定だって受け取りますよ」
「……あっ」
城ヶ崎君と重なった唇が柔らかくて気持ちよくて。全身に甘々でピリピリな痺れを起こす。
腰がくだけて蕩けちゃいそう。
キスがさっきよりも長くて、押しつけるように強くてちょっぴり激しい。
「強引……」
「先輩、イヤじゃないよね?」
目の前に、すぐそこに城ヶ崎君。
お互いの鼻の先が当たる。
その時、キッチンからしゅしゅしゅしゅって変な音と蒸気が上がった。
「――! 城ヶ崎君、お鍋吹きこぼれてるかも!」
慌てて二人でガスコンロに向かうと、鍋は吹きこぼれる寸前だった。
「おっと。野坂先輩に夢中になってるうちに具材がよく煮えたみたいです」
「城ヶ崎君、危ないから料理をしている時はイチャイチャは禁止です」
「ちぇっ、仕方ありませんね。そうですね、火元は危険ですから。よしっ、仕上げをしちゃいましょう」
ブラウンシチューがいい匂いをさせて出来上がった。
お皿に盛り付けて、生クリームで城ヶ崎君がハートを描く。
別皿の御飯もハートの形。
サラダの薄い人参は星型でくり抜いてある。
「すごい、ハートにお星さまだね」
「星とハートてんこ盛りです。ちょっと遊んでみましたあ」
「器用だね。凝ってる〜」
「先輩のためならね。頑張りますよ」
きゅんっ!
またときめいてしまいました、城ヶ崎君に。
さっきから私の胸がきゅんきゅんとうるさい。
「さあっ、アツアツなうちに食べましょう」
「いただきま〜す」
ぱくっ、もぐもぐ。
「うーん! 美味しいっ!」
「良かった〜。先輩からの『美味しい』いただきましたあっ」
ふふっ。思わず、笑ってしまう。
城ヶ崎君が小さくガッツポーズして喜ぶ姿、私も嬉しくなってしまう。
私のために男の子が御飯を作ってくれるだなんて……。
感激しちゃうな。
「先輩。あーん」
「ふえっ、『あーん』って言われても」
「良いじゃないですか。食べさせて、先輩」
「ええっ、もう……。どれをあーんする?」
「とりあえずトマトで良いです」
「トマトね……」
おずおずとサラダのミニトマトをフォークに載せて城ヶ崎君の口に持ってく。
「あーん」
「あーん」
ニコニコしながらもごもごする城ヶ崎君、リスかハムスターみたいだなあ。
その無邪気な笑顔、なんつー破壊力。
ああ、抱きしめたくなる。
えっ、私。
抱きしめたくなるって可愛い動物みたいにってこと。変な意味は無いよ。
「ほんと、美味しい。料理得意なんだね」
「純粋に先輩を喜ばせたくて。最初は全然出来なかったですけどね」
「ええっ! 私のために?」
「そうで〜す。なかなか先輩が僕に落ちてくれないからね、胃袋をつかもうかと思いまして」
なんでそこまで尽くしてくれるの?
元カレの中山君は私に女らしさとか俺の母親みたいにしろとか献身を求めてきたけど、城ヶ崎君は違う。
「先輩にもお返し。はい、あーん」
「あーん」
城ヶ崎君にされるがままにシチューをスプーンで一口もらうと、不覚にも涙が出そうになった。
「先輩ごめん、熱かった? 目がうるうるしてるよ」
嬉しすぎて。
涙がじわっときてる。
「ううん、城ヶ崎君が優しいから」
「……昔の恋なんて僕が忘れさせてあげるから。」
「私、顔に出てた?」
「はい、顔に出ちゃってますよ。野坂先輩は素直な人だからね」
城ヶ崎君はお見通しなんだ。
……鋭い。
人の気持ちに敏感で。
城ヶ崎君は困っている人を放っておけない人だ。
「素直になった勢いで、先輩、僕と付き合っちゃいましょうか」
「それはちょっと……」
「もぉ〜、強情な人だなあ。それでもあとで抱きしめさせて下さいね。今夜こそ、うんって言ってもらうんだから」
「城ヶ崎君っ」
そんなん言われたら恥ずかしい。
城ヶ崎君と過ごす夜はすごく楽しくて、美味しくて。
いつまでも一緒にこんな風に過ごしたいとか思っちゃった。
仕事帰りに……。
き、緊張しちゃうなあ。
「先輩、改めてお疲れ様で〜す。はい、どうぞ」
城ヶ崎君はとびっきりの笑顔を添えて冷え冷えのビールを私にくれた。
「ありがとう、お疲れ様。……きゃっ、冷た〜い」
私の頬に缶を一瞬当てて、城ヶ崎くんがニンマリとした笑みを浮かべてる。
「ごめんごめん、冷たかったですか? ってわざとです」
「じょ、城ヶ崎君〜。もぉ、子供みたい」
「えへっ。野坂先輩のびっくりした可愛い顔が見たくてちょっといたずらしちゃいました」
「……っ! 城ヶ崎君、さり気なく甘い」
ソファの後ろから城ヶ崎君が私をふんわりと抱きしめてくる。
城ヶ崎くんの抱擁は優しい。
まるでエアリーな羽毛布団な暖かさと心地良さが私を包んで……、ああ癒やされるぅ。
目を閉じてじっとその温もりに身を任せて。
いけない、人肌が恋しくて城ヶ崎君の密着した熱を堪能しちゃってる。
城ヶ崎君の腕、振りほどけないな。
しかも腕捲くりした腕が、普段隠されてる筋肉があわらになって逞しくてさらにドキドキ。
思わず頬をそっとつけてしまいたくなる。
このまま密着してる城ヶ崎君に身を委ねてしまいそう。
「先輩をもっと甘〜く攻めたいです。御飯食べたら、たくさん抱きしめさせてくださいね。僕、会社でいっぱい我慢しましたよ。早く大好きな先輩とイチャイチャしたいな」
「じょ、城ヶ崎君ったら。だ、だめだよ」
「なんでダメですか? ダメなんて言われたら僕、めっちゃへこんじゃいます」
「私たち、だってまだ付き合ってるわけではないし……」
城ヶ崎君はパッと手をほどいてそっと離れてく。
あっ、私……。寂しいかも。
温もりが冷めていく。
「だ・か・ら〜! 僕の方は付き合う気満々なんですって。どうしたら正式に付き合ってくれるんですかね、先輩は。そんなトコだけガードが堅いんだから」
そ、そうは言われましても。
付き合ったらお別れが辛いの。
こんなに好き好き言ってくれる城ヶ崎君だって付き合ったら飽きたりするんだ、たぶん。
「きちんと恋人になったら、先輩と僕はいくらでもイチャイチャべたべたし放題。先輩を蕩けるほど愛して独占出来るのに」
「……照れちゃうんですけど」
「照れた顔も可愛いですよ、先輩」
誘われままにほいほい着いてきて、お家に上がってしまい、良かったんでしょうか。
のこのこ来てしまったのは、城ヶ崎君は残業を手伝ってくれたし、お礼がしたいって思ったからなんだけど。
城ヶ崎君が『お礼してくれるなら、先輩僕の家に遊びに来てー。先輩と一緒にいられることが一番良いです』とか言ってくれちゃうから。
きゃあっ、甘い甘い。
すっかり城ヶ崎君のペースに飲み込まれてしまってる私。
それに……優しくてほんわかな癒やされ系の可愛い後輩、城ヶ崎君に誘われたらふらふら〜っと吸い寄せられてしまう。
城ヶ崎君くんのお家はすごく綺麗に片付いている。通された、無駄なものがない落ち着いたスタイリッシュな部屋。
城ヶ崎君の性格そのものを表しているって感じ。
城ヶ崎君の勢いに押されてしまったと言いますか、あの捨てられた子犬みたいな目でうるうるされて見つめられてしまうと弱いんだよなあ。
……どうも断れないんだよね〜。
「ねえ、城ヶ崎君、そういやビールなんて飲んで大丈夫なの?」
ちょっと心配になっちゃう。城ヶ崎君はたしかお酒がめっぽう弱いはず。
「ああ、僕は御飯を作り終えるまでは飲みませんよ〜。先輩は飲んで待ってて下さい。くつろいでね」
「私だけ飲むのはちょっと気が引けちゃうよ。なんか手伝う。お野菜切ろうか?」
私が私が立ち上がりかけると重なる言葉。
「大丈夫ですって。野坂先輩は今日はお客様ですからね。ゆっくり座っててくださいね」
「うーん、そう? いつでも手伝うから……」
追い打ちかけるように、そう言われてしまってはしょうがない。
私はエプロン姿の城ヶ崎君をじっと見つめてしまう。
「次は一緒に料理を作りましょうね〜。先輩のエプロン姿、すっごいそそられそうです」
「そそられるって……」
ポーッと頭から湯気が出ちゃいそう。
「さっ、とりあえずこちらをどうぞ」
城ヶ崎君がおつまみにって出してくれたトマトのカプレーゼ。それとサーモンや生ハムにアボカドのピンチョスがお洒落〜。美味しそう。
「ありがとう」
口数が少なくなってしまうのは、城ヶ崎君が知らず知らずのうちに私の心に入り込んでくるから。
――城ヶ崎君を見ていたいな。
「そうそう、最近はすこおしだけ飲めるようになったんですよ、僕。先輩と一緒に飲んでみたくって」
「城ヶ崎君……」
「お酒が飲めたらね、先輩をちょっと大人なバーとか連れて行けるかな〜って思ったんだ」
きゅうぅぅ〜ん♡
な、なに、この急な不意打ちキュン!
それに城ヶ崎の笑顔が可愛すぎるぅ。
すごい。笑顔が、城ヶ崎君がキラッキラだ。
眩し〜い!
「ところで先輩」
「な、なあに?」
城ヶ崎君の顔がちょっとふくれっ面になってる。
「さっき買い出しに行ったスーパーで、僕がほんの少し目を離した隙に、出会ったばかりのどこの誰かも分からない馬の骨にナンパされてときめいたりしませんでしたか?」
「あ、あれはただ道を聞かれて……」
「先輩ってチャラチャラしたいかにもホスト風の金髪男が好みなんですか? ……僕も髪染めてイメチェンしようかな」
「ち、違うよ。道を教えただけだし」
「あーれー? その後『お姉さん、お礼したいなあ。良かったら俺と茶〜しない』とか言われてませんでしたか?」
「それは言われましたけれども」
「世間一般にああいうのをナンパっていうんですよ。知らなかったんですか? ……ううっ先輩は可愛すぎる、無防備すぎる。もっと男を疑わくっちゃ。すぐさまキツく断らないと」
「私、お茶のお誘い、丁重に申し出を却下するつもりだったのよ。だっ、だけど城ヶ崎君が来て鬼の形相で『僕の連れです』って」
「ふふっ。警戒してくださいね、僕以外の男には。じゃないと……」
「じゃないと?」
「こんなことされちゃいますよ」
城ヶ崎君の唇がサッと私の唇に触れる。
すぐに離れたのに残る感触、柔らかくて、熱い熱を感じた。
「先輩、隙がありすぎ!」
「もぉ城ヶ崎君っ」
「ねえ、もう一回良いですか?」
ち、近いよ。
――城ヶ崎君。
潤んだ瞳、息がかかるほど近づく城ヶ崎君と私。
ドキッ……ドキドキ。
「先輩、黙ってるなら……。僕は肯定だって受け取りますよ」
「……あっ」
城ヶ崎君と重なった唇が柔らかくて気持ちよくて。全身に甘々でピリピリな痺れを起こす。
腰がくだけて蕩けちゃいそう。
キスがさっきよりも長くて、押しつけるように強くてちょっぴり激しい。
「強引……」
「先輩、イヤじゃないよね?」
目の前に、すぐそこに城ヶ崎君。
お互いの鼻の先が当たる。
その時、キッチンからしゅしゅしゅしゅって変な音と蒸気が上がった。
「――! 城ヶ崎君、お鍋吹きこぼれてるかも!」
慌てて二人でガスコンロに向かうと、鍋は吹きこぼれる寸前だった。
「おっと。野坂先輩に夢中になってるうちに具材がよく煮えたみたいです」
「城ヶ崎君、危ないから料理をしている時はイチャイチャは禁止です」
「ちぇっ、仕方ありませんね。そうですね、火元は危険ですから。よしっ、仕上げをしちゃいましょう」
ブラウンシチューがいい匂いをさせて出来上がった。
お皿に盛り付けて、生クリームで城ヶ崎君がハートを描く。
別皿の御飯もハートの形。
サラダの薄い人参は星型でくり抜いてある。
「すごい、ハートにお星さまだね」
「星とハートてんこ盛りです。ちょっと遊んでみましたあ」
「器用だね。凝ってる〜」
「先輩のためならね。頑張りますよ」
きゅんっ!
またときめいてしまいました、城ヶ崎君に。
さっきから私の胸がきゅんきゅんとうるさい。
「さあっ、アツアツなうちに食べましょう」
「いただきま〜す」
ぱくっ、もぐもぐ。
「うーん! 美味しいっ!」
「良かった〜。先輩からの『美味しい』いただきましたあっ」
ふふっ。思わず、笑ってしまう。
城ヶ崎君が小さくガッツポーズして喜ぶ姿、私も嬉しくなってしまう。
私のために男の子が御飯を作ってくれるだなんて……。
感激しちゃうな。
「先輩。あーん」
「ふえっ、『あーん』って言われても」
「良いじゃないですか。食べさせて、先輩」
「ええっ、もう……。どれをあーんする?」
「とりあえずトマトで良いです」
「トマトね……」
おずおずとサラダのミニトマトをフォークに載せて城ヶ崎君の口に持ってく。
「あーん」
「あーん」
ニコニコしながらもごもごする城ヶ崎君、リスかハムスターみたいだなあ。
その無邪気な笑顔、なんつー破壊力。
ああ、抱きしめたくなる。
えっ、私。
抱きしめたくなるって可愛い動物みたいにってこと。変な意味は無いよ。
「ほんと、美味しい。料理得意なんだね」
「純粋に先輩を喜ばせたくて。最初は全然出来なかったですけどね」
「ええっ! 私のために?」
「そうで〜す。なかなか先輩が僕に落ちてくれないからね、胃袋をつかもうかと思いまして」
なんでそこまで尽くしてくれるの?
元カレの中山君は私に女らしさとか俺の母親みたいにしろとか献身を求めてきたけど、城ヶ崎君は違う。
「先輩にもお返し。はい、あーん」
「あーん」
城ヶ崎君にされるがままにシチューをスプーンで一口もらうと、不覚にも涙が出そうになった。
「先輩ごめん、熱かった? 目がうるうるしてるよ」
嬉しすぎて。
涙がじわっときてる。
「ううん、城ヶ崎君が優しいから」
「……昔の恋なんて僕が忘れさせてあげるから。」
「私、顔に出てた?」
「はい、顔に出ちゃってますよ。野坂先輩は素直な人だからね」
城ヶ崎君はお見通しなんだ。
……鋭い。
人の気持ちに敏感で。
城ヶ崎君は困っている人を放っておけない人だ。
「素直になった勢いで、先輩、僕と付き合っちゃいましょうか」
「それはちょっと……」
「もぉ〜、強情な人だなあ。それでもあとで抱きしめさせて下さいね。今夜こそ、うんって言ってもらうんだから」
「城ヶ崎君っ」
そんなん言われたら恥ずかしい。
城ヶ崎君と過ごす夜はすごく楽しくて、美味しくて。
いつまでも一緒にこんな風に過ごしたいとか思っちゃった。