月へとのばす指
膨れ上がる気持ちをぶつけるように腰を動かし、唯花の豊かな両胸を揉みしだいた。興奮で息が上がり、汗がぽたりぽたりと、白い肌に落ちていく。
「唯花、愛してるよ、唯花」
「久樹、さっ、あぁ、あぁっ、あぁぁ!」
追いつめられるような嬌声を唯花が放った。もうすぐ達するのだろうと久樹は察する。
彼女と一緒に達したい。その思いで、さらに腰を速く振るった。
「あぁっ、あ、だめ、だめぇぇっ」
「そのままイって、唯花……俺と一緒に」
「は、あっ、あぁぁ──あ、あぁ────っ!!」
絶叫とともに、唯花の体がびくびくと跳ねる。直後、膨張しきった久樹の分身から、ぶわりと欲望の証が放たれた。
避妊具からあふれんばかりの量に多少の焦りを覚えたが、すぐに唯花の中から去ることはできなかった……きゅうきゅうと、痙攣しながら締め付けてくる動きが、心地良すぎて。
呼吸をある程度整えてから、ようやく幹を引き抜き、白濁でいっぱいになった避妊具を取り去る。始末しながら、枕元に置いてあった予備を手に取り、再び装着した。
目を閉じて荒い息をついている唯花は気づいていない。
乳房の先端をそっと摘むと、はっ、と鋭い息をもらした。キスをしながら久樹は尋ねる。
「ごめん、唯花──もう一回だけしたい」
「…………え、え?」
当然ながら戸惑いの声を上げる唯花に、もう一度口づける。
「あと一回だけ……今晩だけ、俺のものだって思わせて」
「久樹さ、んっ、んぅ──」
唇を割り、舌を絡めながら、再び体の線をなぞり始める。汗ばんだ肌にまた戻ってきた熱を、久樹は彼女の返事だと解釈した。
──翌朝。
目を覚ました時、隣から唯花は消えていた。
部屋の中にももういなかった。手帳のページを破り取ったらしいメモに、一言だけ書き残して。
『ありがとうございました。 館野唯花』