わたしが悪役令嬢になった日
カナリアのさえずり
この場所はわたしにも覚えがある。
確か、カナリアがマチルダに嫌がらせをされた最初の場所だ。
カナリアが学園で出会ったこの国の王子に連れられて、この公園を散歩していると、それを見かけたマチルダが、噴水に突き落としたのだった。
実は、マチルダは子供の頃から王子に想いを寄せており、学園のダンスパーティーのパートナーになって、王子と結ばれるつもりだった。
それをカナリアに邪魔されたと思い、噴水に突き落としたのだった。
(ここが『カナリア』の世界なら、推しの王子に出会えるよね)
本作に登場するカナリアの同級生である王子は、わたしの推しでもある。
爽やかな見た目ながら、硬派な一面もあり、文武に優れた姿が魅力的であった。
(あそこにいるのって……)
噴水に近づいていくと、噴水で遊ぶ子供たちや談笑している老人たちに混ざって、ピンク色の縦巻きロールの女性と、白銀色の短髪の男性がいた。
(マチルダと王子! どうして……)
二人が噴水の前で会うシーンは、どこにも書かれていなかった。
目の前で、原作にも外伝にもなかったシーンが展開されていた。
(ううん。それよりも、かなり親密そうに見えるんだけど……)
楽しそうに談笑する二人の姿を見ていると、身体の内側から黒いものが沸き上がってきた。
それを振り払って、二人から目を離した時だった。
「そういえば、あの小鳥とはどんな関係ですの?」
「小鳥……ああ、彼女のことだね」
二人が話す小鳥というのは、カナリアーーわたしのことだろう。
「学園で噂になっていますわ。王子は卒業パーティーで小鳥と踊るのではないかと」
「ボクが小鳥さんと? それはどうかな……」
「小鳥ではないの?」
「ボクは、ボクの目の前のピンクの小鳥も気に入っているからね」
「ピンクの小鳥って……きゃあ!」
足を滑らせて階段から落ちそうになったマチルダを、すかさず王子が助け起こす。
「ありがとうございます」
「こんなことをするのは君だけだよ」
「もう、王子ってば……」
甘い雰囲気になった二人に、わたしの中で何かがブチ切れた。
しばらく見守っていると、王子は迎えの馬車が来たと言って、マチルダと別れた。
王子と別れたマチルダは、一人でどこかに向かうようだった。
わたしは木陰から出ると、公園から去って行くマチルダのあとを追いかけたのだった。
確か、カナリアがマチルダに嫌がらせをされた最初の場所だ。
カナリアが学園で出会ったこの国の王子に連れられて、この公園を散歩していると、それを見かけたマチルダが、噴水に突き落としたのだった。
実は、マチルダは子供の頃から王子に想いを寄せており、学園のダンスパーティーのパートナーになって、王子と結ばれるつもりだった。
それをカナリアに邪魔されたと思い、噴水に突き落としたのだった。
(ここが『カナリア』の世界なら、推しの王子に出会えるよね)
本作に登場するカナリアの同級生である王子は、わたしの推しでもある。
爽やかな見た目ながら、硬派な一面もあり、文武に優れた姿が魅力的であった。
(あそこにいるのって……)
噴水に近づいていくと、噴水で遊ぶ子供たちや談笑している老人たちに混ざって、ピンク色の縦巻きロールの女性と、白銀色の短髪の男性がいた。
(マチルダと王子! どうして……)
二人が噴水の前で会うシーンは、どこにも書かれていなかった。
目の前で、原作にも外伝にもなかったシーンが展開されていた。
(ううん。それよりも、かなり親密そうに見えるんだけど……)
楽しそうに談笑する二人の姿を見ていると、身体の内側から黒いものが沸き上がってきた。
それを振り払って、二人から目を離した時だった。
「そういえば、あの小鳥とはどんな関係ですの?」
「小鳥……ああ、彼女のことだね」
二人が話す小鳥というのは、カナリアーーわたしのことだろう。
「学園で噂になっていますわ。王子は卒業パーティーで小鳥と踊るのではないかと」
「ボクが小鳥さんと? それはどうかな……」
「小鳥ではないの?」
「ボクは、ボクの目の前のピンクの小鳥も気に入っているからね」
「ピンクの小鳥って……きゃあ!」
足を滑らせて階段から落ちそうになったマチルダを、すかさず王子が助け起こす。
「ありがとうございます」
「こんなことをするのは君だけだよ」
「もう、王子ってば……」
甘い雰囲気になった二人に、わたしの中で何かがブチ切れた。
しばらく見守っていると、王子は迎えの馬車が来たと言って、マチルダと別れた。
王子と別れたマチルダは、一人でどこかに向かうようだった。
わたしは木陰から出ると、公園から去って行くマチルダのあとを追いかけたのだった。