【完結】完璧上司の裏の顔 オタクなコスプレ配信者♀、実はファンだった上司に溺愛求婚される
いつしか会ったこともない田吾作さんに千紗はガチ恋していた。
女子高育ちで、男性経験がないこと、あまり世間慣れしていないこともあって、千紗は変に思い込みが激しく、そして危うい純粋さがあった。
「田吾作さんがたとえチビでもハゲでもニートでもいい。好き……」
だが、千紗は生来の引っ込み思案とコミュ障、そして自信のなさを拗らせており、リアルで恋愛するという考えは浮かばなかった。
好きになったことがあるのは、父親の書庫にあった漫画の北斗の拳のケンシロウだけだった。
田吾作さんは確かに三次元にも存在しているのだが、会わなければ二次元のキャラと同じように千紗を傷つけることもない。
たとえ結婚していようが、クズでも変態でも(千紗の配信を見ている時点で可能性は高い)会わなければこの想いが汚れることはない。
琥珀に閉じ込められた水のように、ずっと綺麗なままでいられる。
──この恋はこのままでいい。それは臆病な千紗にとって安全策だったのだ。