聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

つい紫呉さんと話し込んでいるうちに、隣を歩いていたはずのあーちゃんの姿がないことに気がつく。



「あぁ、彼女ならもう家に帰りましたよ」



………え?



「翠の家、とっくに過ぎてますし。ほら、あそこでしょう?」



紫呉さんの言葉に振り返る。



「えっ…えぇ!?」



100メートルくらい後ろにあったのはまぎれもなく私の家で。



自分が本当に紫呉さんしか見えていなかったということを、あらためて実感してしまった。



う、うそ…全然気づかなかった…。



「…翠の目に映るのは、俺だけでいい」



「へ…っ?」



小さく呟かれた紫呉さんの声を聞き取ることが出来ず、顔を見上げる。



そしたら紫呉さんは「いいえ」と首を横に振った。



「なんでもないですよ。俺の願望であり独り言です」



「そ、そう…ですか?」



よくわからないけど…紫呉さんがそう言うんならいっか。
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