聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「君、嬉しそうだね?何かいいことでもあった?」
「いえ、私もいつか見に行きたいなって…って、え…?」
隣から聞こえた知らないテノール。
「あはは、驚いた顔も可愛い」
爽やかな笑顔でそう言ったのは、私の高校の制服をまとった中性的な顔立ちの男性だった。
だ……誰…!?
知らない人から声をかけられ、動揺して声が出せない。
ただわかるのは、彼がとてもイケメンさんだということだけ。
なんで私に話しかけてきたのか、なんでそんなにニコニコ笑っているのかがわからないからとても怖い。
こ、こうなったらあの手しかない…!
意を決した私はこぶしをぐっと握りしめて、彼の方を向き口を開く。
「ぇ…っと…し、失礼します…!」
そして、失礼を承知で走り出した。
「え、ちょっと待っ───」
ご、ごめんなさいっ…!!
彼に呼び止められても知らんぷり。
後ろを振り返ることもせず、全速力で学校へと向かった。