聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「え…いや、謝る必要なんてな──」
「本当に、ごめんなさい…っ…」
何か言いかけていた紫呉さんの言葉を遮ってまで、深々と頭を下げる。
私のいつもと違う様子を見て何かを察したのか、黙り込んでしまった。
「…翠、顔を上げてください」
そう言われて、やっと体を起こしたら。
「何かあったなら話して欲しい…なんて言いません。翠が話したくないのであれば、聞いてほしいと言われるまで待ちます。だから…そんな、謝ることないんですよ?」
「っ…!!」
ラベンダーの香りが、私を包み込んだ。
優しく、何もかも許されてしまいそうな柔和な笑みを浮かべる紫呉さん。
その優しさが、今はこんなにも苦しい。
きっと、紫呉さんは気づいてる。
待たせてしまったことだけじゃなくて、他にも後ろめたいことがあること。
…ぜんぶ、見抜いてるんだ。