聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「初対面の人のことを名前呼びって、かなり抵抗があるんですが…」
「別にいいでしょうそのくらい。俺は翠って呼びますから」
「そんな勝手な…」
これはもう強制以外の何ものでもない。
「翠もほら、言ってみてください。せーの?」
えぇっ…?!今やるの…!?
「し………れ、さん…」
「聞こえません。もっと大きく」
うぅっ…鬼…鬼がいます…。
勇気を振り絞って出した声も届かず涙ぐむ。
「はい、もう一度?」
それでも許してくれない蘭さんを納得させないと、話が進まないと思ったから。
「〜っし、紫呉さん…!…で、いいですか…?」
恥を忍んで叫んだ。
…は、恥ずかしくて死んじゃう…っ…。
涙ぐむ私の頬は、今にも爆発しそうなくらいに熱い。
男の子の名前を呼んだのなんて、本当にいつぶりだろう。