聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
仁さんはむず痒そうに視線を逸らし、紫呉さんは金魚のように口をパクパクと開けては閉じてを繰り返す。
紫呉さんの初めて見る表情に、やっと事の重大さに気づいた。
わ……私、なんか物凄く恥ずかしいこと言っちゃってたかも…。
途端になんとも言えない恥ずかしさが私を襲って、プシューと湯気が出ていく気がした。
仁さんには紫呉さんとお付き合いしていると言ったけれど…実際は違う。
紫呉さんの彼女は彼女でも、仮初の彼女。
あくまで「保護対象」に過ぎない。
なのに…あんな、告白紛いなことをしてしまって…。
あ、穴があったら入りたいっ…。
肩がふるふると震えて、この場にいるのがとてもいたたまれなくなっていると。
「…翠。今の言葉は…翠の本心と受けとっていいんですか?」
いつもの冷静さを取り戻した紫呉さんが、私を落ち着かせるようにぎゅっと手を握ってきた。