聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「逃げられると思った?残念。このまま帰すわけないでしょ?」
「っぅ…」
クラクラするほどに甘ったるい薔薇のような香りが、私を包み込んだ。
「っや…離、して…っ」
「大丈夫だよ。前も言った通り、僕は春風さんが嫌がるようなことは一切しない。こんなに可愛い春風さんが傷つくようなことも、絶対しないから安心して?」
優しい声色とは裏腹に、私を拘束する腕の力は増すばかり。
逃げようと力を込めてもビクともしない。
っ…この匂い、昨日の嗅いだゼラニウムの香りとほとんど一緒。
ただ少し違うのは、香りの強さ。
昨日嗅いだものよりも強く、爽やかを通り越して甘さしか感じない。
その甘さというのも、ずっと嗅いでいたら気持ち悪くなりそうな妙な香りがする。
蓮見先輩の腕の中にいるこの時間でさえ、もうしばらく続けば気分が悪くなってしまいそうだ。