聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

「意味が、わかりません…」



思ったことをそのまま伝えれば、一瞬だけ蓮見先輩の力が弱まった。



っ、今しかない…!!



決意してすぐのこと、蓮見先輩の腕を振り払って距離をとる。



気になることは山ほどあるけれど、この場に留まることは危険だと判断し、そのまま走り出そうとしたら。



「っ待って翠ちゃん、おねがい…!もう、僕から離れていかないで…」



蓮見先輩の悲痛な叫びが聞こえて、思わず振り返ってしまった。



「っ…!」



瞬間、目を見張る。



絵本から飛び出してきたような王子様を彷彿とさせる綺麗な顔は酷く歪み、薄く形のいい唇をぎゅっと噛んでいた。



どれだけ苦しい思いをすれば、そんな痛々しい表情になるのだろうか。



…私には、到底計り知れない。



「…本当に、覚えてない?ぜんぜん、全く?」



蓮見先輩の質問に、首だけを横に振る。
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