聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

「そ、っか……でも、そうだよね。離れないでとか、僕が言える立場じゃないか。実際離れていったのは僕の方だし」



はは、と自嘲気味に笑う蓮見先輩。



私にとっての蓮見先輩は、“怖い人”の一言でくくることができてしまうほどの人物。



…………なのに、なんでかな?



「…迎えに来るって言ったのも、忘れちゃったんでしょ?」



悲しげな蓮見先輩のその表情に、どこか“あの子”の面影を感じる。



それはとても鮮明で、懐かしいとさえ思えてしまうほど。



『迎えに来る』



それは、少女漫画とかで見かけるようなありきたりなセリフ。



幼なじみ同士の女の子と男の子が、引っ越しを境に離れ離れになってしまうことを悲しみ合い、ヒーローの男の子が誓いを立てるの。



でも……私も、そんなことを昔に言われた。



相手は男の子でも幼なじみでもなくて、近所の女の子。
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