聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
もう、後戻りはできない。
「ん、いーこ。じゃあ、また放課後に迎えに行くから。逃げちゃダメだよ」
蓮見先輩は妖しく笑って、身を翻した。
「っ…ぅ、こわ、かった……っ」
頬から手が離れると、魔法が解けたかのように全身の力が抜け、そのまま地面にペタリと座り込んでしまう。
「っぅ…ふ、っ…」
蓮見先輩を少しでも信じてしまった私が、馬鹿だったんだ。
今さら後悔したって仕方のないことなのに、色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざり混ざって涙が零れ落ちてくる。
自身に対する不甲斐なさと、これからどうなってしまうのだろうかという底なしの不安。
紫呉さんは……彩那ちゃんは……私のせいで酷い目にあったりしない……よね?
私はもう、どうなったっていいけれど。
大好きな人たちが傷つくことだけは、何がなんでも絶対に許せない。
そして、その原因を作ってしまったかもしれない自分に対しても…。