聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「…あ、春風さん。まさか君の方から来てくれるとは思わなかったよ。嬉しいなぁ」
周囲の視線が矢のごとく突き刺さる。
今、私が怖いと思わないのは…きっとみんなのおかげ。
誰かを守るためなら、人はこんなにも強くなれるんだって教えてくれた。
蓮見先輩の作られた笑顔に、私も同じものを向ける。
「…行こう、春風さん。遅くなっちゃうし」
蓮見先輩は目をひそめて、私の手を取り歩き出した。
「っぅ、はい……」
触れられた瞬間、ゾッと冷たいものが走ったけれど。
っ、我慢、しなくちゃ…。
ゴツゴツと骨ばった蓮見先輩の右手は、まるで体温が感じられなかった。
蓮見先輩に手を繋がれたまま昇降口に向かい、女の子たちの甲高い悲鳴を浴びながら進んでいく。
うぅ…やっぱり、ちょっとこれは辛いかも。
今までこんなに居心地の悪さを感じながら学校内を歩いたことは、一度もない。