聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

「…翠、こっち向いてください」



「へ…っ」



むぎゅう。



効果音を付けるなら、たぶんそんな音だったと思う。



「し……しぐれひゃんっ…?」



紫呉さんに両手で顔を潰されて、思うように喋ることができない。



しかも、顔が潰されているということは相当変な顔になっているはずだ。



そんな私を間近真正面から見られているのはどうも落ち着かないし、嫌すぎる…。



今よりブサイクになっちゃったら、どうしようもないのに…!



離してくださいと言いたいけれど、今はとてもそんなことを言える空気ではない。



紫呉さんの真剣さを肌で感じて、何も言えなくなってしまう。



紫呉さんは私の頬を挟んだまま口を開いた。



「…少し、俺のことを甘く見すぎてるんじゃないですか」



「怒り」と「悲しみ」が込められたようなその声が、私の胸を痛いくらいに締め付ける。
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