聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

でも、そういうわけにはいかないらしい。



あれ…紫呉さん、どこ見てるんだろう?



紫呉さんの視線が私から外れて横にずれていたから、何かと思って同じ方向を見てみる。



「あ…もう六時…?」



目線を追った先にあったのは、アンティークな置時計。



その時計の短針が、六の手前で止まっていた。



「名残惜しいですが、もう帰らないといけませんね。送っていくので、支度をしてください」



紫呉さんはそう言うと、すぐにベッドから下りて私に手を差し出した。



まだ帰りたくないなぁ…なんて、我儘言ったら紫呉さんを困らせちゃうもんね。



もう少しいたかったけど、差し出された手を取って私も起き上がる。



「っわ…!?」



その瞬間、ひょいっと引き寄せられるように紫呉さんの腕の中に収まった。



「明日の朝から、一緒に登校しましょう。学校で一緒にいられない分は、朝も放課後で埋め合わせです。そうじゃないと、俺が翠不足で死に至りますからね」



「っ…はい!」
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