聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
何か理由があるんだろうけど…聞いて大丈夫かな…?
お互いの知らないところをちょっとずつでも知っていけたらいいな…なんて。
私は、そんなふうに思っているけれど…。
きっと、聞かれたくないことだって少なからずはあると思う。
それを無遠慮に私が聞き出すことだけはしたくない。
心に土足で踏み込むようなことだけは、絶対したくないんだ。
不安になりながら紫呉さんの返答を待っていると、少し紫呉さんの手に込める力が強まって。
「…幼い頃からの癖なんです。直したくてもなかなか直らないんですよ」
目を伏せる紫呉さんは、どこか憂いを帯びた表情でそう言った。
「きっと一生、こんな感じだと思います。ですから、翠は別に敬語じゃなくていいんですよ。同い年でしょう?」
でも、すぐに私に視線を移してから苦笑する紫呉さん。
「あと、いい加減“さん”はやめませんか?俺が呼び捨てにしているのに、翠だけさん付けはちょっと思うところが……」