聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
紫呉さんの驚く声を無視して、すぐ側にあった鉄製の階段を駆け降りる。
「え、キミどこから───」
誰かとすれ違ったけど、そんなこと気にしていられない。
っ、出口だ……!!
出入口と思われる扉を目掛けて扉を開けると、外に通じていた。
紫呉さんに追いつかれる前に逃げなくちゃ…!
もう同じことを繰り返さないためにも、耳をすまして僅かに聞こえる車の音を頼りに走った。
走ったり歩いたりを繰り返してから10数分後、やっと大通りに出られて一安心。
そこからは歩いている人に声をかけて、なんとか無事に駅までたどり着いた。
最初からこうすればよかった…なんて思ったりもしたけど、今更すぎる。
そうして家に帰ってから、お母さんには卵が売れ切れていたと嘘をついた。
心苦しかったけど…仕方がないよね。