聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
きっともう、紫呉さんに会うことはない。
今日が最初で最後。
これでよかったって思ってるはずなのに…こうあるべきなのに。
…どうしてかな。
「っ…なんで私、泣いてるんだろう…っ…?」
涙が溢れて止まらないの。
優しく抱きしめてくれたあの温もりも、私を見つめる真剣な瞳も…。
もう二度と、感じることはできないんだ。
そう思えば思うほど胸が締め付けられて、苦しくて。
「っ…」
部屋にこもった私は、誰にも気づかれないようにすすり声を上げた。
涙を拭った服の袖には、まだラベンダーの香りが残っている。
「…っ、紫呉さんのバカっ…」
自分の体を抱きしめたのは、もう一度彼に触れたかったから。
こんなことを思ってしまう私を、許してください。