聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

私の幼い頃は夢見がちだったから、こういうシチュエーションにかなり憧れがあった。



まるでおとぎ話のお姫様みたいになってる自分を想像して、うっとりしていたのを覚えている。



そんな話を隣で聞いてくれている紫呉さんは、笑わないで真剣に聞いてくれた。



「翠の夢を叶えられたのなら、嬉しい限りです。子供の頃の翠が夢見た景色と、今の景色に相違はありませんか?」



「相違…?」



って、なんだろう…?



「イメージしていたものと違うところがあったりしますか?って意味です。別に深く考えないでください。ただ、幼い翠の想像した夢がどんなものなのか、俺が知りたいだけなので」



…やっぱり、紫呉さんは優しいな。



聞き返したら、紫呉さんにしては珍しく苦笑が返ってきて少しびっくり。



それと同時に、こんな話でも興味を持ってくれる紫呉さんが愛おしく思えてきた。



「…そうですね。あと、噴水があったかもしれません。大きいやつじゃなくて、五角形くらいの小さな噴水…。そこにバラの花びらが落ちていて、自分の顔を覗き込むんです」



本当、今思うと夢見がちにも程があるんじゃないかと笑ってしまいそうになる。
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