聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
明らかに様子がおかしい私の話を聞いたり、慰めるわけでもなく。
ただそっと、背中を押してくれている。
だからこの先は、斗真さんじゃなくて紫呉さんから聞くべきだ。
何も知らなかった…それは、間違いないんだけど。
どこかで紫呉さんのことを知るということに、恐れている自分がいた。
私なんかが紫呉さんの色んなことを知って、本当に受け止められるのか…少し、不安だった。
紫呉さんの何を知っても、私の気持ちは一生変わらないというのに。
「…ありがとうございます、斗真さん。そして、ごめんなさい」
斗真さんに深く頭を下げて、私なりに精一杯の感謝と謝罪を伝える。
「ちょっ、やめてよ翠ちゃん!お礼なら翠ちゃんの笑顔が見れれば、俺はそれでじゅーぶんだから!!」
そんな私の行動を見て、慌てて私の頭をぐいーっと上に向ける斗真さん。
ふふっ…やっぱり、斗真さんといると元気が出るな。
あまりの慌てっぷりに思わず笑っちゃいそうになったけど、なんとかこらえて微笑んだ。
「…はい、本当にありがとうございました」
「ん、紫呉とちゃんと仲直りしてきな。って、あれ?喧嘩したわけじゃないんだっけ?」