聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
本当に大切なもの 紫呉side
今日ほど自分を最低な人間だと思ったことはない。
四年前の“あの日”は、最低だとか最悪だとか、そういう次元をゆうに超えていた。
今日は、また違う自己嫌悪に陥っている。
こんなに自分は愚かで愚鈍だったのかと、思い悩んでも仕方がないことをいちいち考えてしまうほどに。
今日という日をもう一度だけやり直せるなら、あのバラ園で紫のバラを見た時へと戻りたい。
そして、自らの手で自分の口を塞いでやりたい。
「余計なことを口走るな」と。
「…翠は、何を言いかけてたんですか」
気づけば、無意識のうちに零していた。
目の前に翠がいて、答えが返ってくるわけでも…その答えを聞く勇気もないくせに。
…ははっ、なんて女々しいやつ。
聞く勇気がないとまで言ってしまうと、さすがに自嘲せざるを得ない。
翠は知らないだろう。
本当は俺が、こんなにも女々しくて意気地がない男だなんて。
…いや、見せる気がないの間違いか。
翠の前ではかっこよくいたいし、そうあろうと努力している。