聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
実際、今日までボロが出たことはなかったはずだ。
ただ、一度でも綻びが出れば、今日のように一瞬で崩れてしまう。
そして、取り繕うことに夢中になっていた俺は本当に大切な人の気持ちを踏み躙ってしまった。
翠が今まで俺のことを知りたそうにしていたことなら気づいていたし、俺のことを気遣ってあえて聞こうとていなかったことも感じ取っていた。
…その上で、隠していたんだ。
今まで自分がしてきた罪悪が翠に知られてしまうことを、何よりも恐れていたから。
翠が知ったら、きっと嫌われてしまう。
そんなことを言ったら笑われてしまうだろうか。
翠を信じていないわけじゃない。
勝手に未来を想像して、勝手に怯えている。
滑稽だと笑われても構わない。
それだけ翠のことが大切で、失いたくない存在なだけだ。
タクシーに乗り込んだあの瞬間、猛烈に翠を抱きしめたくなった。
小さく華奢な体を抱きしめて、陶器のように白い肌にキスをして。
これまでのことを全て洗いざらい話して安心させたい。
…本当に、心の底から思ったんだ。