聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

それができたら、どんなに楽だろう。



知られることを恐れている自分とは裏腹に、抱え込んでいる何もかもを伝えたくなったけれど、結局今こうしてタクシーの中にいる。



…次、翠に会ったら謝らないといけないことがたくさんあるな。



まずは、今日のことから。



デート中に翠を困らすような話をしたことと、翠以外のことを優先したこと。



いや、後者には色々わけがある…が、それを話すのも言い訳がましいか?



…話すかどうかはまた後で決めよう。



あとは、斗真を“弟”だと言ったことも。



事実に変わりないとはいえ、嘘をついたことにも変わりはない。



それから、斗真の話をするにあたって、家族のことについても話さないといけないだろう。



上手く話せる確証もなければ、時間を多く取らせてしまう可能性だって十分にある。



できればこの話は一番したくないし、そもそも翠に話すべき話なのかもまだ迷っている最中だ。



どこまでも純粋で、綺麗な心の持ち主である翠に聞かせるような話ではないはず。



斗真を含め、家族の話をする上では自分のことも語らざるを得ないから余計に躊躇してしまうのかもしれない。
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