聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「………眩しい」
机に突っ伏した姿勢のまま体を起こして一人ぼやく。
「…悪いね紫呉。ブラインドを下げるのをすっかり忘れていたよ」
それを聞いていたのかいないのか、パリッとしたスーツを着た彼が謝りながらこのガラス張りの部屋に入ってきた。
「…冗談じゃありませんよ、じいさん」
「ははっ、老いぼれのすることだ。大目に見てくれ」
快活に笑う白髪の男────俺の祖父に、特に悪びれた様子もなく言われて怒る気も失せてしまう。
「まだこの時期だからいいものの、夏だったらどうしてくれるんですか。笑い事で済むとでも?」
「今は夏じゃない。そう怒るな」
…なんだこの不毛すぎる会話は。
もうこの人には何を言っても無駄だと悟り、まだ少し重い腰を上げてから話題を変えた。
「約束通り、もうここに来る必要はありませんよね?」
緩んだネクタイを直し、乱れた髪を整えながら聞く。
「あぁ、多分」
…多分?
「なんですか、その曖昧な言葉。聞き捨てなりませんね」
「嘘だよ嘘。怖いから睨まないでくれ」
…全く、本当になんなんだこの人は。