聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

彼の態度はさっきから一貫していて、どこをどう切り取っても70代には見えない。



このお調子者の祖父が父さんの父親であり、大手企業の取締役だなんて信じられるだろうか。



俺は未だに信じられないが、仕方ないといえば仕方ないだろう。



「それより、早く帰った方がいいんじゃないか?今日は平日だろう。遅刻するぞ」



………。



今さら急かす祖父に、怒りを通り越していっそ呆れてしまう。



この状況を作った張本人が言うことか?それ。



なんとか喉まででかかった言葉を飲み込み、代わりに溜息を吐く。



「今日は祝日なので学校は休みなんですよ。言われなくてもさっさと帰るのでご安心を」



周りに置いてある手荷物をまとめて、少しホコリっぽいブレザーを羽織った。



彼の方には目もくれず、そのまま扉へと進む。



「…父さんと母さんの命日には、ちゃんと墓参りに行きますから。それまでお元気で」



「ハッハッハ、孫息子に言われちゃあ長生きしないとなぁ。お前も元気でいろよ?」



「こっちのセリフです」



吐き捨てるように言ってから、背を向けてこの最上階にある社長室を後にした。
< 304 / 326 >

この作品をシェア

pagetop