聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
彼の態度はさっきから一貫していて、どこをどう切り取っても70代には見えない。
このお調子者の祖父が父さんの父親であり、大手企業の取締役だなんて信じられるだろうか。
俺は未だに信じられないが、仕方ないといえば仕方ないだろう。
「それより、早く帰った方がいいんじゃないか?今日は平日だろう。遅刻するぞ」
………。
今さら急かす祖父に、怒りを通り越していっそ呆れてしまう。
この状況を作った張本人が言うことか?それ。
なんとか喉まででかかった言葉を飲み込み、代わりに溜息を吐く。
「今日は祝日なので学校は休みなんですよ。言われなくてもさっさと帰るのでご安心を」
周りに置いてある手荷物をまとめて、少しホコリっぽいブレザーを羽織った。
彼の方には目もくれず、そのまま扉へと進む。
「…父さんと母さんの命日には、ちゃんと墓参りに行きますから。それまでお元気で」
「ハッハッハ、孫息子に言われちゃあ長生きしないとなぁ。お前も元気でいろよ?」
「こっちのセリフです」
吐き捨てるように言ってから、背を向けてこの最上階にある社長室を後にした。