聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

…と、その前に。



玄関のドアを開ける直前で一度立ち止まり、深く深呼吸をした。



こんな時間に会いたいと言っても、こうして会って自分のことを話そうとしてくれている。



きっと紫呉さんのことだから私の気持ちを察してくれていて、その上で色々考えてくれている。



紫呉さんが私を大切にしてくれているように、私も紫呉さんを大事にしたいから。



何を聞いても、何を知っても、離れないって伝えなきゃ。



………よし、行こう。



家族にバレないよう、ゆっくり慎重にドアを開けた。



うっ…ま、眩しい…っ。



開けた瞬間にドアの隙間から差し込んでくる朝日が眩しくて、思わず目を閉じてしまう。



それをなんとか堪えて、そこにいるはずの紫呉さんを見上げたら。



「ふっ…眩しそうですね」



ずっと会いたかった紫呉さんが、目じりを下げ柔らかく微笑んでいた。



っ…紫呉さん、だ…。



昨日会ったばかりなのに、帰り際のやり取りがあったせいか優しい紫呉さんの笑顔に安心してしまう。



「おはようございます。朝早くにすみません。迷惑かとは思ったんですけど、どうしても早く翠に会いたくて連絡しちゃいました」
< 309 / 326 >

この作品をシェア

pagetop