聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

照らされた朝日にも負けないくらい爽やかな紫呉さんの笑みと、最後の一言が胸に刺さった。



っ、ダメだ…頬が緩んじゃう。



口角が上がりそうになるのを必死に堪えて、紫呉さんの目をしっかり見ながら返す。



「お、おはようございますっ…!私の方こそごめんなさい…。紫呉さんは、こんな時間から会うつもりなかったですよね…」



でも、その嬉しさよりも申し訳なさが勝ってしまい、最後の方にかけて段々と声が小さくなってしまった。



改めて口にすると、やっぱり迷惑だったんじゃないかって不安になってくる。




だけど、その不安をぬぐい取るように紫呉さんが私の手を取って包み込んだ。



「何言ってるんですか。翠に会いたいと言われたら、どこにいたってすぐに飛んでいきますよ。たとえそれが真夜中や早朝だとしても、です」



触れた先から伝わる温度。



「っ…」



紫呉さんの温かさが、胸にまで染み入る感覚がした。



「…場所を移しましょうか。話はそれからです」



「あ…は、はい!」



そう言われて返事をすると、紫呉さんは私の手を取ったまま離さず、満足そうに歩き出した。
< 310 / 326 >

この作品をシェア

pagetop