聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

紫呉さんに連れてこられたのは、綺麗で広いNovaの倉庫。



この前来たばかりなのに、もう遠い昔のように感じる。



そう感じるのは、あの日から今まで経験したことの無いような目まぐるしい日々を送っていたからかもしれない。



「翠は何が飲みたいですか?俺は大抵ダージリンですけど…」



前と同じ部屋に行くと、ティーポットを手にした紫呉さんに聞かれて。



「あ、私も同じもので…!」



と、つい反射的にそう言ってしまった。



そういえば、前飲んだ時苦く感じたんだよね…。



やっぱり違うのを…と言いかけたけど。



「わかりました。入れるまでゆっくりしていてくださいね?」



花が咲いたように嬉しそうな顔をされたら、もう言えるわけない。



…ずるいなぁ。



食器のカチャカチャという音を聴きながら待っていると、しばらくしてからダージリンのフルーティーな香りが鼻腔をくすぐった。



この香りはとってもいい匂いなんだよね…。



前にダージリンの特徴を調べたら、引き締まった渋みと深いコクのある味わいだと書いてあった。



「紅茶のシャンパン」とも呼ばれているそうで、紫呉さんにピッタリだと勝手に思い、思わず笑ってしまったほど。
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