聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

そして、私の顔の火照りが治まった頃。



「俺がここ…Novaにいる理由が知りたいんですよね?」



紫呉さんが少し真面目に切り出した。



「はい」



話してくれるのは凄く嬉しい…けど、やっぱり緊張する。



頷きつつも、心臓がいつもとは違う意味でバクバクしてしまう。



「どこから話せばいいのか悩みますが…。まぁ、端的に言うと」



なんか思ってたより軽い…?と、少し肩の力が抜けたと思ったら。



「夫が亡くなったショックでヒステリックになった母親のいる家に帰りたくなくて夜中に外を出歩いてたところを、仁さんに拾われた…ってところですかね」



あまりにも衝撃的すぎて、最初は言葉が出てこなかった。



「っ……」



それでも何とか頭を必死にフル回転させて、ようやく理解が追いついた時には、感情がぐちゃぐちゃになっていた。



「…そんな顔しないでください。全て終わったことで、過去のことです。今はもう悲しいだとか思ってませんから」



紫呉さんの優しい声が、瞳が、余計に胸を締め付ける。



今、紫呉さんはどんな気持ちで笑ってるんだろう。



「…っすみません」



そうだよ…私が悲しむのはお門違いだ。
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