聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「見ず知らずの他人を救ってヒーロー気取りしていた俺は、本当に守るべき人を守れなかったんです」
「っ…」
紫呉さんが話すことを躊躇っていた理由が、ようやくわかった気がした。
誰にだって後悔の一つや二つはあると思う。
でも、それはそんな“後悔”とかそういうのだけじゃなくて、もっと奥深いもの。
ああしていれば、こうしていれば…そんな思いを何年も抱えて、思い出す度に自己嫌悪して。
私がもし同じことを経験していたら、好きな人にこそ話せないかもしれない。
「…もうわかっているとは思いますが、斗真とは実の兄弟ではありません。実父の父親…会社の社長をしている血の繋がった祖父の友人のお宅に、お世話になることになったんです。それが斗真の家族でした」
昨日タクシーを使って向かわなければならなかったのも、お爺さんに呼ばれていたからだそうで。
大手企業の社長さんをしているお爺さんのお仕事を手伝っていたんだとか。
「昨日は本当にすみません…」
「い、いえいえ…!逆に引き止めてすみませんでした…!」
…と、そこまで聞いてハッとする。
そういえば、斗真さんから聞いたって一応言っておいたほうがいい…よね?
「斗真さんから血が繋がっていないってことはこの前聞いてしまって…。で、でも、他のことは一切聞いてません…!」
何の言い訳をしているのか自分でもわからないけど、それを聞いた紫呉さんは目を丸くして驚いた。