聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

すくい上げるような優しいキスが、一瞬で涙腺を緩ませた。



「出会ってくれて…好きになってくれて、ありがとうございます」



「っ…」



想いが、涙と一緒に溢れる。



頬を伝う雫が温かいのは、きっと紫呉さんのおかげ。



泣いているのに、こんなにも心が温かくなるのは、きっとこれ以上ないくらいに満たされているから。



「っ、私こそ…です。出会ってくれて、いっぱいいっぱい助けてくれて…好きになってくれて、ありがとうございますっ…!」



たくさんの“ありがとう”を伝えたくて、私から紫呉さんの唇にキスを落とした。



き、キスしちゃった…しかも、わ、私から…。



初めての経験で、羞恥心のあまり途端に顔が熱くなっていく。




なかなか紫呉さんの顔を見られず、視線を逸らしてしまったとき。



「…翠は、男を煽るのが本当にお上手ですね」



世界が、反転した。



「っ…!?し、紫呉さんっ…?あの、何して…」



いつの間にか私は仰向けになっていて、紫呉さんが覆いかぶさっている。



どちらかが少しでも動けば、唇が触れてしまいそうなくらいの距離。
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