聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「えっと、春風翠で……うわっ!?」
名乗ろうとしたら急に腕を引っ張られて、ラベンダーの香りに包まれた。
紫呉さんの腕の中にすっぽりと収まってしまい、体温が一気に上昇する。
な、なんで急に……?
「し、紫呉さ…」
「翠はもう、俺の彼女なんで。手、出さないでくださいよ」
紫呉さんと初めて会った時のような、低くて冷たい声。
斗真さんに向けられているのは、紛れもなく警戒の視線で。
「へぇ…今まで何人もの女を振ってきた兄ちゃんが、彼女を作るなんてねぇ。しかも独占欲丸出し。あははっ、余裕無さすぎっしょ?」
紫呉さんを挑発するように笑う斗真さんと、負けじと睨みつける紫呉さん。
……の間に挟まれた私。
こ、これは……何が起こってるの?
私の気のせいじゃなければ、2人の間にバチバチとした電流のようなものが見える。