アジェンダ王の記憶の夢
これは記憶? 夢・・いや、そう 私の最後の記憶だ
生きていた頃 生前の記憶

戦は激しさを増していた 
敵国 白の国に数人の手強い戦士と魔法使いが現れた
白の宗主となったフェルナンドは戦の指揮が手強い
戦いを重ねるごとに手慣れてゆく
黒の王族として 火竜王、最大の火焔の王である私 アジェンダが追い詰められてゆく
初陣となった、少年の
我が息子ソリシアが向こうで周りの者達に守られながら
必死に戦っている

あの子を戦には、まだ出すつもりはなかったが
予定外の事だった 
私と愛しいアリシアとのたった一人の黄金の瞳の息子
火焔に次ぐ戦の為に生まれた黄金の力の魔法の王・・

アリシアが遺した・・私の子

敵の魔法・・大地から岩や土の塊が槍の形となり
突然 突き出て 悲鳴をあげながら 兵士達が下から貫かれ
殺される

・・大地の槍と呼ばれる魔法を無数に
繰り出されて 次々と餌食となってゆく
敵の風の魔法で 味方の首が引きちぎられる
幻獣達が表れて 食い殺されてゆく 爪で引き裂かれる

もちろん、こちらも 攻撃魔法を繰り出してゆく
炎の魔法で数千人の敵の兵士達を焼き殺す

岩の竜を魔法で生み出して 敵達を潰してゆく・・

ほんの少しの油断・・岩の魔法を受けてしまう
身体中を無数の岩で出来た槍が貫く 口から血が零れ
身体を震わす そこに毒矢が・・私の片眼を貫く

身体は『大地の槍』に貫かれ 片眼には致命傷の毒・・
人形のように 宙に浮かんだまま・・
貫いた槍の一つの場所も悪い 心臓の近く
激しい激痛が襲う 悲鳴 

愛しい息子ソリシアが悲鳴を上げ こちらを見てる

・・・敵が多すぎる・・・こちらには・・来るな
行け・・・

声は出なかった・・思念は伝わった それで充分
最後にあの子に微笑む 私の守護者の竜人
それに私の黒の騎士にも・・
泣きながらソリシアは味方達に押しとどめられて
敗走する
あの子はまだ十代なのに 両親を無くすのか
すまぬ・・だがこれも運命
母を亡くし・・そして私も逝く
そなたの父は戦に負けて殺された 戦乱の時代なのだから


・・意識が遠くなる寸前 フェルナンドが白い翼を広げ 
岩に貫かれ宙に浮いた 私の身体近くまで来て
冷たい顔をしたまま 私の首 目掛けて剣を振り下ろす

司会は‥‥転がる‥

‥‥私の大事な妹シルフィニアは 敵の前の白の宗主シューツオンに
首を切り落とされ 城門に飾られた まだ16歳だった。

妹の首も身体も その後は行方不明のまま
恐らく樹海に捨てられたのだろう 
あの子は罪のない 優しい美しい子だったのに

‥‥どうでもいいことだが 
私の首は何処に飾られるのやら多くの罪を犯してきた 沢山殺した 惨殺した
火焔の王 火竜王の名にふさわしく 焼き殺した 沢山の街を灰燼に返した
泣き叫ぶ声・・悲鳴 いつの間にか慣れてしまっていた
これは当然の報いなのだから

夢の中で 血の海に沈んでゆく 私の首と身体・・


「・・様・・」「アジェンダ様」揺り起こす優しい手
「ん?アリサか・・」私は愛しい猫耳の少女を見る

ここは千年以上の現世 私は幽体となり 
魔法の王として現世に降臨している  現世を守る一人として
自分自身の姿を少年の姿に変えて・・

「何か 夢を見られたのですか うなされてました」
心配そうに彼女は 私を見つめて顔を寄せて来る
…妻のアリシア姫の魂は行方不明

そして長い年月の果て 私は新しい恋をして

アリサの青い瞳や声は アリシア姫によく似てる
心地よく優しい声
「私のアリサ 大丈夫 少し夢見が悪かっただけだ」

「・・・膝枕をおねだりしても良いかな?」
「はい アジェンダ様 うふっ」

戦乱の時代は遠い昔の出来事

罪人は 死の報いで許されたのだろうか?
穏やかな風が吹いて来る 咲き誇る庭園の花々が窓から見える。
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