【短編】隣の席の田中くんにはヒミツがある
「浜田さん」

「は、はい」


 なんだか嬉しそうな田中くんに呼ばれて、慌てて返事をした。


「気付いてないみたいだけれど、浜田さんも俺たちみたいな超能力があるんじゃないかな?」

「え? ええ⁉」

「花のおまじないで、人を治療することが出来るんだよ! ホラ、ここだって治ってるし」


 ちょっと興奮気味な田中くんは、制服のシャツを引っ張って昨日みたいにわき腹を見せる。

 そこは昨日紫色になっていた場所――のはずなんだけど。


「え? ウソ、治ってる?」


 昨日の痛々しさが嘘のように、田中くんのわき腹は痣も何もなくキレイな状態だった。

 田中くんはシャツを戻して話を続ける。


「な? 今の傷も治ったし、やっぱり浜田さんの力だよ!」

「で、でも、今までこんなあからさまに治った人はいなかったよ?」

「じゃあきっと俺がエスパーだからだ。エスパー同士は共鳴するとか聞いたことあるから!」


 話しながらグイグイ近付いて来る田中くんに戸惑う。

 でも好きな人に近付かれて嫌なわけはないからドキドキするし、色んな意味で心臓がうるさくなった。

 そしてトドメとばかりに両手を掴まれる。
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