【短編】隣の席の田中くんにはヒミツがある
「っ⁉」

「浜田さん、お願いがあるんだけど」


 両手を包むように掴まれ、真剣な目が私を見つめる。

 田中くんが私だけを見ている状況と、手に伝わる彼の体温に心臓が止まりそうになった。


「な、なに?」

「俺の、パートナーになってくれないかな?」

「パートナー?」

「うん。俺、まだ未熟だからさ、昨日や今日みたいにケガすることも多いんだ。だから浜田さんに治療してもらえると本当に助かる」


 毎回病院のお世話になるわけにもいかないから、とちょっとばつが悪そうに笑う田中くん。


「だから、俺のパートナーになってくれないかな?」


 もう一度私に頼んできた彼から目が離せない。

 スッキリした目は真っ直ぐ真剣に私だけを見つめていて、掴まれている手がギュッと握られて。

 ドキドキドキドキ、心臓の音が鳴りやまない。


 田中くんの、SPのパートナーに私がなる?

 私に出来るのかな?


 不安が先立つ。

 でも、田中くんは私を守ると言って安心させてくれた。

 田中くんを好きな気持ちは、今もどんどん積み重なっていってる。

 田中くんの役に立ちたい。

 純粋にそう思った。


 それに、田中くんの“気になる子”よりもっと彼に近付けるかもしれないっていう欲も出てきて……。
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