【短編】隣の席の田中くんにはヒミツがある
「うん。ちょっと不安だけど、やってみる」


 勇気を出して、田中くんのパートナーになるって返事をした。


「ホントに? マジ? やった!」


 スッキリした目のせいで少し大人びて見える田中くんが年相応に喜ぶ姿に「ふふっ」と笑ってしまう。

 こういうちょっと幼く見える田中くんも可愛くて好きだな。

 田中くんにこんなに喜んでもらえて、胸に温かい気持ちが広がる。

 ふわふわした気持ちのままニコニコしていると、いつの間にか田中くんが私をジッと見ていることに気付いた。


「え? ど、どうしたの?」

「え、や、その……」


 気の抜けた顔を見つめられて恥ずかしい。

 でも田中くんも恥ずかしがっているみたいで本当にどうしたんだろうって思う。

 不思議に思って見ていると、田中くんは私から視線を逸らしてぽそっと話した。


「かわいいな、と思って」

「えっ⁉」


 ドクンッと心臓が大きく跳ねる。

 今の、聞き間違い?

 なんて思ってしまうくらい信じられなかった。

 かわいいって、私のことを言ったの⁉


 ドクンドクンって、心臓が期待するように脈打つ音が聞こえる。

 どういう意味なのか確かめたいけれど、期待とは真逆だったらって思うと確認出来なくて。

 でもそうして聞くのを迷っていたら田中くんが「あー!」と声を上げた。
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