【短編】隣の席の田中くんにはヒミツがある
 だって、今もあのときの田中くんの表情を覚えてる。

 思い出しただけで心臓がドキドキ早鐘を打っちゃうもん。

 私は今日も教室の鉢植えの世話をしながら、今日こそは話せるかな? と人に囲まれている田中くんを見ていた。


 ……ん?

 田中くん、ちょっと顔色悪い?


 なんとなくだけれど、いつもより元気がなさそうに見える。


「今日も今日とてお疲れ様、ちゆ。どうしたの? 田中くんのことじっと見て」

「あ、奈美ちゃん」


 近くに来た奈美ちゃんは、そう言った後すぐにニヤァッとからかうような笑みを浮かべた。


「ま、ちゆが田中くんのことを見てるのはいつものことだけど」

「うっ……」


 私が田中くんを好きな事は誰にも言っていないんだけど、奈美ちゃんにはなぜかすぐにバレちゃったんだよね。


『ちゆは分かりやすくて可愛いねぇ』


 って、頭撫でられたっけ。

 そんなに私、分かりやすいかなぁ?


「確かに見てたけど……ねぇ、今日の田中くんちょっと具合悪そうじゃ無い?」

「え? そうかな? いつも通りに見えるけど?」

「……そっか」


 気のせい、なのかな?


 私も何となくそう思ったってだけだから、気のせいなのかもしれない。

 田中くんの周りにいる人達もいつも通り彼に接しているし。


 そう思ったんだけれど……。


 やっぱり、おかしい!
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