溺愛甘々トライアングル
第一話



『この学園には3人の王子様がいる』


〇満開の桜並木の校庭 朝の登校時間 

制服姿(ブレザーにズボン)の『あさひ』と『勇大(ゆうだい)

校舎に向かって歩くイケメンな二人を、今朝もたくさんの女子が囲んでいる。



『おっとり正統派王子 桃園あさひ 高3』

女子達「あさひ様、おはようございます」

あさひ「(王子スマイルで)おはよう」



あさひは髪がサラサラで笑顔が似合う、さわやか王子様。

170cm細身の体に、ブレザーの制服が似合いすぎ。



『女嫌いな魔王系王子 青柳勇大(ゆうだい) 高3』

女子達「今日もワイルド感がたまらないです」

勇大 「(目も合わせず不愛想に)あっそ」



勇大は身長180cm越えの細マッチョ。

青みがかった黒髪は緩く波打っていてる。




〇満開の桜の木の下

三つ編み二つ縛り・眼鏡の奥手女子・春乃(はるの)(高1)

桜の木の陰から、二人の王子を見ている。

勇気&自分に自信がなさ過ぎて近寄れない。



春乃「(目をキラキラさせて)あさひ王子と勇大魔王のツーショットを瞳に映せるなんて、今日も朝から贅沢すぎだぁ~」




〇桜並木の一本道。

校舎に向かって並んで歩くあさひと勇大。

目がハートの女子達がついてくる。



女子達「今日も王子様すぎ~」

   「美顔の人間国宝が、目の前に二人も存在していらっしゃる~」

   「目の保養です~」

あさひ「アハハ。みんな、ほめ過ぎだってば。朝からみんなの可愛い笑顔が見られて、ハッピーな気分だよ。ありがとう(ニコッ)」

女子達「(感激で)あさひ様~」



あさひの麗しい笑顔に、女子達がバタバタ倒れだす。

あきれ顔の勇大が、あさひの肩に腕を乗せる。



勇大 「推しの笑顔見て倒れるとか、女子の生態、マジで意味不明」

あさひ「勇大も微笑んであげなよ。みんな喜ぶよ」

勇大 「ぜってー無理。キャーキャー声聞くだけで、鳥肌ブワだし」

あさひ「(ニヒヒと笑いながら)知ってる~ 勇大が女の子を苦手なのは、幼稚園のころからだよね~」



桜の木の下にいる春乃を発見したあさひ。


あさひ「あっ!」

ストレートのサラサラ髪をなびかせ、春乃のところまで進む。



推しの王子様が近づいてきたのに気づいた春乃。

二本の三つ編みが驚きで飛び跳ねる。

ドキドキアタフタでてんぱる春乃の前に、あさひ王子が。

あさひの手が春乃に伸びてきた。

春乃は真っ赤になりながら目をつぶる。



あさひ「髪についてたよ」

春乃 「(恐る恐る目を開いて)えっ?」

あさひ「桜の花びら」

春乃 「あっ、ありがとうございます」

あさひ「何も考えずにとっちゃったけど、そのままにしておけばよかったかも」



ん?と首をかしげる春乃。



あさひ「(極上の王子様スマイルで)桜の花びらのヘアアクセ。ふんわりと優しい雰囲気をまとう君に、すごく似合っていたから」



推しに褒められ、顔がさらに赤らむ春乃。

恥ずかしくてドキドキしすぎて、アタフタアタフタ。



春乃 「あっ…えっ…わわわわ…」

あさひ「(くすっと笑って)やっぱりかわいい」

春乃 「かかか……かわいい?」



いつも見ているだけだった推しに『かわいい』と言われ、平常心を保てない春乃。

目がグルグル回って大パニック。



春乃「わっわわっ、、、私に似合う花なんて、この世に存在しませんからっ!」



自分でも意味不明なことをしゃべり、春乃は逃げるように走り去る。



あさひ(可愛くてうらやましいなって、本気で思ったんだけどなぁ)



あさひは指でつまんでいる桜の花びらを見つめる。(空を見上げる角度で)

頭に桜の花びらをのせた女子達が、あさひを取り囲む。



女子達「あさひ様、私のも取ってください」

   「私も桜の花びらが似合ってますか?」

あさひ「(満開スマイルで)アハハ~ みんな可愛いよ」

女子達「きゃぁぁぁぁ~!!」



飛び跳ねて喜ぶ女子達。

冷徹魔王系の勇大はイラッ。

耳をふさぎ、血管ブチッ。



勇大 「(怒鳴り声で)うるせ~!!」



怒り顔で女子達の髪を乱暴にかき乱し、桜の花びらを飛ばす。



勇大 「(ムスッ)あさひ、教室いくぞ」

あさひ「あっ、うん。みんなまたね」

女子達「勇大様に、髪を触られちゃった」

   「奇跡~」

   「もう髪を洗いたくない~」




女子達は感激。

友達と喜びを分かち合うように、手を取って飛び跳ねている。




校舎に向かい、桜の並木道を並んで歩くあさひと勇大。



勇大 「朝から耳痛てぇ~ 女子のキンキン声って、俺の体力を吸い取る呪いかよ? 俺のサッカーコンディションを崩そうと、敵チームから送り込まれてるスパイにしか思えないんだけど」

あさひ「女子たちの声を自分へのエールだと思えるようになれば、勇大はもっとサッカーで強くなれるんじゃないの?」

勇大 「彼女なんて一生いらない。サッカーと私どっちが大事?とか言い出すのが目に見えてんじゃん」

あさひ「彼女なら、真剣に応援してくれると思うけどなぁ」

勇大 「世界中の女が全員あさひみたいな奴だったら、微笑んでやってもいいけど」

あさひ「なにそれ」


勇大 「この世界に女は、オマエだけいればいいってことだよ」



ヤンチャ笑顔を光らせ、朝妃に笑いかける勇大。

勇大の後ろには、満開の桜と桜吹雪。



あさひ(かっ……カッコいい///)



嬉しすぎた朝妃は、真っ赤な照れ顔を隠したくてうつむく。



あさひ(男子の制服を着て王子様なんて呼ばれていますが、実は私、女の子なんです)

  (学校のみんなも知ってます)



勇大「朝妃(あさひ)は変わるなよ」

朝妃「えっ?」

勇大「男に甘えたり、イケメン見てキャーキャー言いだしたら、俺はオマエのことを軽蔑して、ガン無視するからな」

朝妃「アハハ~ 顔も性格も男っぽい私に、可愛い女子キャラが似合うわけないじゃん」

勇大「それでこそ、俺の幼馴染けん親友」

朝妃「幼稚園からの付き合いだからね。アハハハ~」



ハイテンションで笑ってごまかす朝妃。

でもその後、勇大にバレないように暗い表情になる。



朝妃(はぁ~、誰にも言えないよ……私は勇大が好き。可愛いものも大好き。本当はレースやピンクのワンピースが似合う、キュートなアイドル系女子になりたいなんて……)





桜が舞い散る中、過去を思い出しながら空を見上げる陽彩。


朝妃(幼稚園の時、隣の家に勇大家族が引っ越してきた)



〇回想(二人が幼稚園の年長)

朝妃の家の玄関。

引っ越しの挨拶に朝妃の家に来た、勇大の父、母、勇大、勇大兄。

朝妃、妹、父、母が、勇大家族と対面している。



勇大母「隣に越してきた青柳です」

朝妃母「桃園です。お隣同士、仲良くしてくださいね」



ムスッと不機嫌顔で、朝妃に紙袋を渡す6歳の勇大。



勇大「これ、俺が作ったクッキー。特別にオマエにくれてやる」



勇大の母は「勇大、なんて言い方をしてるの!」と焦っているけれど、朝妃は勇大から目が離せない。



朝妃(か……かっこいい///)


(回想終了)



朝妃(不愛想な勇大に、一瞬で恋に落ちた6歳の私。同じ幼稚園に入ると聞いて、次の日、一番可愛い服で幼稚園に行ったのに……)



〇回想(幼稚園の年長の時)

幼稚園の教室内。

三角座りをするたくさんの園児の前に立つ、先生と勇大。

ムスッと顔の勇大は、誰とも目を合わせないようにそっぽを向いている。



先生「にじ組さんに、新しいお友達が入りました」

朝妃(昨日挨拶に来てくれた、隣の家の子だ。クッキーおいしかったって言いたいな)

先生「青柳(あおやなぎ)勇大(ゆうだい)くんです。勇大君、みんなに言いたいことある?」

勇大「(冷たい声で)女は俺に近寄らないで。女と可愛いものは大嫌いなんで」


朝妃(ガーン!)



三角座りをする朝妃の顔じゅうに、絶望の縦線がビッシリ入る。

大好きな可愛いウサギのぬいぐるみを、背中に隠す。


滑り台の一番上で、片手を挙げ決意する朝妃。



朝妃「私、今日から男の子になる!」


(回想終了)




朝妃(それからの私は……)



〇過去の朝妃の人生を振りかえり。


『小学2年生』

サッカーボールを追いかけ、真剣にドリブル勝負をしている朝妃と勇大。



『小学4年生』

お互い吊り上げたザリガニを手で持ち、大きさ比べ勝負。

ザリガニの大きさでは朝妃の勝ち。でも勇大が、俺のザリガニのハサミの方が大きいと訴えている。



『中学の入学式』

一緒に登校しようと、勇大の家の前で勇大を待っていた朝妃。

男子の制服の学ランを着ている。

家から出てきた勇大が、真顔で朝妃に聞く。



勇大「オマエ、男子の制服で中学に通うのかよ?」

朝妃「私にスカートが似合うと思う?」

勇大「まぁ~オマエが女っぽい恰好なんてしたら、俺はオマエの隣にいないけど」

朝妃(私は一生、スカートなんて履かない! 勇大の隣にいたいから!)


(過去の回想 終了)



〇現在 

靴箱に向かいながら、桜並木を歩く朝妃と勇大。

朝妃は歩きながら、おでこに手を当て溜息を吐く。


朝妃(勇大にとっての居心地いい親友を極め続けたら、女子にキャーキャー言われる王子様になってしまった。本当は、勇大の彼女になりたいのになぁ……)



〇靴箱


勇大「今夜、俺の家にゲームやりに来いよ」



靴箱に靴を入れようとして、手を止めた朝妃。

誘われたのが嬉しくて、全力で笑う。



朝妃「欲しいって言ってた新作ゲーム、もう手に入れたの?」

勇大「発売日に、兄貴に並んでもらった」

朝妃「パズルゲームでしょ? 私、勇大に負ける気がしないんだけど」


アハハと豪快に笑う勇大。

ハテナ顔で勇大を見る朝妃。


朝妃「なに?」

勇大「いやぁ~さ、俺に生意気なこと言う奴、マジで貴重だなぁと思って」



勇大は朝妃の首に腕を巻き付けながら、ニヒヒと笑う。

自分に心を開いてくれていることが嬉しくて、朝妃は微笑む。



朝妃(この関係を崩したくない。幼馴染のままでいっか。幸せだから)



朝妃(そう思っていたのに……一か月後、私は女嫌いの幼馴染に失恋をした)


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