溺愛甘々トライアングル
第三話
☆第三話☆
〇次の朝。登校中。学校までの道。
一人で歩く朝妃。どよ~んと暗い顔。
朝妃(勇大の顔なんか見たくなくて、いつもより早く登校しちゃった。彼女がいたなんてショックすぎだよ。昨日は眠れなかったし)
寝不足の朝妃。女子達が朝妃を見つけ駆けてくる。
女子達「朝妃様、寝不足ですか?」
「目の下にクマができてますよ」
朝妃 (ドキッ。みんな鋭い……)
朝妃 「宿題終わらせるのに、時間がかかっちゃって……」
女子達「勇大様は一緒じゃないんだぁ」
「珍しいですね」
朝妃 (お願い。勇大の名前は出さないで…… 辛くて泣いちゃいそう……)
朝妃は無理やり笑顔を作り、王子様スマイルでニコッ。
朝妃 「私ひとりじゃ、物足りない?」
女子達「そんなことありません!」
女子達「あさひ様とお話しできるだけでも、生きててよかったって思えます」
朝妃 「フフフ、ありがとう」
微笑んだ後、みんなにバレないように暗い顔をする朝妃。
〇教室
一番後ろの自分の席に座りながら、鞄の教科書を机の中に入れる朝妃。
朝妃(はぁ~)
絶望顔で重い溜息を吐く。
朝妃(失恋した相手と同じ教室で授業受けなきゃいけないなんて……。地獄だ。幼稚園のころから自分を偽り続けてきた、罰なのかな?」
勇大が教室に入ってきた。ムカつき顔で朝妃の机の前に。
勇大「先に学校に行くなら俺に言えよ。家の前で待ってたんだからな」
朝妃(ムッ! かわいい彼女……できたくせに……)
勇大と目を合わせないように、カバンを机の横に掛けながら朝妃はボソリ。
朝妃「……私なんかと……登校したくないかなって思って」
勇大「昨日、麗華をオマエに紹介したのが嫌だった?」
朝妃「……そういうわけじゃ」
勇大「じゃあなんで、オレを無視するんだよ!」
そらし続けていた視線を、朝妃は勇大に突き刺す。
朝妃「女は嫌いだってずっと言ってたじゃん。なんで勇大は変わっちゃったの?」
カバンから雑誌取り出した勇大。
あるページを開いて、朝妃の机の上に置く。
雑誌の1ページ。
スーツを着て、赤いバラの花束を持ち、高級車のフロントにもたれかかるキザなサッカー選手の写真が。
朝妃(勇大が憧れているサッカー選手?)
ページの選手のセリフ近くを、勇大は指でトントン叩く。
サッカー選手のセリフのアップ。
『サッカーが強くなりたければ、姫を守れる男になれ』
朝妃(はぁぁぁ? この人、なんてことを言っちゃってるの? あなたはサッカーのプロでしょ? 恋に百戦錬磨のホストみたいなことを言わないでよ! 勇大みたいなサッカーバカは、素直に信じちゃうんだからね!)
朝妃「勇大は麗華さんから告白されたんだ」
勇大「それがなに?」
ジッと机の木目を見つめる朝妃。自分自身にムカついている。
朝妃(麗華さんは勇気を出して行動をしたんだ。それなのに私は、勇大にフラれるのが怖くて、男っぽくふるまって、幼馴染の親友ポジションを独占してた。認めよう。恋にへたれな私の完敗だ。敗者は消えるのみ)
朝妃「変わっちゃった勇大とは、もう一緒にいたくない!」
勇大「(怒鳴りつけるように)勝手にしろ!」
椅子から立ち上がった朝妃。勇大のいる教室から逃げ出した。
〇英語の授業中。
先生に当てられた勇大。立ちあがり、すらすらと英文を読む。
斜め後ろの方の席から、ぼーっと勇大を見つめる朝妃。
朝妃(はぁ~ かっこいい)
〇体育の時間 体育館。
2クラス合同で男女別。
女子はバレーボール。男子はバスケ(隣のコート)
ダンクシュートを決める勇大を、バレーコートの外で三角座りをしながら、ぼーっと見つめる朝妃。
朝妃(やっぱりかっこいい)
朝妃(諦めなきゃいけないのはわかっているよ。でも、気づいたら勇大のことを目で追いかけちゃう。幼稚園のころからの恋心。私の中から追い出す方法、誰か教えて欲しい)
朝妃は三角すわりの膝に、顔をうずめる。
朝妃(つらいよ……しんどいよ……勇大のこと、好きにならなきゃよかった……)
顔を上げ、泣きそうな顔で勇大を見つめる朝妃。
隣のコートの勇大と目が合い、慌てて視線を逸らす。
女子「朝妃さん、危ない!」
バレーボールが飛んできて、朝妃の顔に直撃。
朝妃は後ろに倒れ、そのまま意識を飛ばす。
〇校舎裏のベンチ。(授業中)
目覚めた朝妃。ベンチの上に仰向け状態。
朝妃(ここは……?)
美少女顔の男の子が、真上から朝妃を見下ろしている。
朝妃(この人は、隣のクラスの璃音くんだ。美少女よりも可愛すぎる王子様って、学校でも大人気。
まつげ長い。瞳がグリグリ。 まじまじ見たの初めてかも…… 膝枕? あれっ? 私、璃音君に膝枕されてる? 夢……かな?)
キュートにニコッと笑う璃音。
璃音「ボールが当たって倒れたんだよ。大丈夫?」
朝妃(あっ、そうだった。ということは……)
膝枕をされたまま、笑顔の璃音を見つめ……
朝妃(これって……現実?!)
飛び起きる朝妃。
璃音と離れるように、慌ててベンチの端に座る。
璃音「僕の膝枕、寝心地サイコーだった?」
朝妃「なんで私がここに?」
璃音「倒れて意識を飛ばしちゃってたから、僕が運んだんだ」
朝妃「どうやって?」
璃音「お姫様を大事に抱きかかえる方法なんて、一つしかないでしょ?」
璃音が朝妃にキュートウインクを飛ばす。
璃音「王子が王子をお姫様抱っこしてるって、女の子達の悲鳴で僕の耳がつぶれるかと思ったぁ」
朝妃は璃音にお姫様抱っこをされ、2クラスの男女に見られている自分を想像する。
朝妃(きゃぁぁぁぁ……恥ずかしすぎる///)
朝妃「なんで保健室じゃないの?」
朝妃(私の体重が重すぎて、保健室まで運べなかった? ありえる。私の身長は170センチ。その分重いし……)
璃音「君に伝えたかったことがあるんだ。やっと言えるよ」
朝妃「……なに?」
ニコニコ笑顔の璃音。ドキドキの朝妃。
璃音「あのね……」
朝妃「……」
璃音「(エンジェルスマイルで)人生、なめきってるの?」
朝妃「・ ・ ・えっ?」
朝妃(天使級の笑顔でディスられてるんですけど……)
璃音「自分のハートを偽って何してるの? 可愛いは命。可愛いは最強でしょ? それなのに、好きな男の側にいたくてサバサバBoyのフリなんてしてさ」
朝妃「なんでそのことを? 誰にも話したことないのに」
璃音「それはね……」
〇璃音の回想(1年前。ショッピングモール内のキュートな雑貨屋)
璃音がお店の可愛い雑貨を見ていると、朝妃がお店に入ってきた。
周りをキョロキョロした朝妃。
朝妃「かわいい///」
目をキラキラさせ、可愛いぬいぐるみを嬉しそうに撫でている。
(回想終了)
璃音「(いじわるそうな笑顔を浮かべ)教えてあ~げない」
ベンチから立ち上がる璃音。
璃音「でも、ヒントくらい出してあげてもいいかな」
スキップしながらベンチの端に座る朝妃の前に。
璃音が朝妃に腕を引っ張る。
そのまま朝妃は、璃音に抱きしめられる。
びっくりする朝妃。
璃音は朝妃を抱きしめたまま、右手で朝妃の頭をよしよしと撫でる。
璃音「かわいい///」
朝妃(私が……可愛い??)
甘い声で可愛いと言われ、顔が真っ赤になる朝妃。
そこに息を切らした勇大が来る。
抱き合っている朝妃と璃音に驚く勇大。
目を見開いている勇大と視線が絡み、てんぱる朝妃。
朝妃(ひぃあぁぁぁ~
なぜ勇大が、こんなところに??)