溺愛甘々トライアングル
第五話
☆第五話☆
『この学園には3人の王子様がいる』
『それは昨日までのお話で……』
〇朝 校門の前に高級車がドドーンと止まっている。
車から降りる璃音。朝妃は降りる勇気がない。
朝妃は可愛くヘアアレンジ&女子の制服デビュー。
ショートの髪は、右側だけハート型のゆる編み込み。
ゴムの縛り目はピンクのリボンで隠れている。
車から降りた璃音。
後部座席に座ったままの朝妃を覗き込むように、車上部に手をつき体をかがめる。
璃音「早く降りて」
朝妃「無理だよ」
璃音「なんで?」
朝妃「恥ずかしすぎだから」
璃音「はぁ~~、しょうがないなぁ~」
朝妃を引っ張って車から降ろし、お姫様抱っこをする璃音。
璃音の腕の中で、慌てる朝妃。
朝妃「おろして!」
璃音「今日は朝妃ちゃんの、『可愛いデビュー記念日』なんだよ」
朝妃「……」
璃音「ニコッと笑って、胸を張って、キュートな自分を楽しんで」
璃音は朝妃を地面に下ろし、ニコニコで朝妃のほっぺをツンツン。
朝妃は気まずそうな顔のまま。
〇新緑並木の道。(校門から校舎まで一直線)
肩を並べて歩く朝妃と璃音。
生徒達の視線が二人にくぎ付け。みんな驚いている。
朝妃(スカートを最後にはいたのは、10年以上前だよ。太ももがスース―する。恥ずかしすぎ///)
たくさんの女子達に囲まれた朝妃と璃音。
女子達「あさひ様~」
女子達「どうしちゃったんですか?」
「昨日まで男子の制服を着ていたのに」
編み込んでいない方の横髪を指でこすりながら、視線を地面に逃がす朝妃。
朝妃「……変……だよね?」
数秒間の沈黙後。
女子達「キャァァァ!」
「可愛いすぎ~~!!」
えっ?ええっ?と朝妃は戸惑う。
女子達「朝妃様って、恥ずかしいとそんな可愛く照れちゃうんですか?」
「王子様の時の朝妃様も、お姫様モードの朝妃様も、どっちも推せる~~」
「私、一生、あさひ様をあがめ続けますから」
朝妃 「(照れながら)……ありがとう」
男子たちも可愛くなった朝妃を見て、ザワザワザワ。『可愛い』とつぶやいている。
女子達「もしかして、璃音様が朝妃様をプロデュースしたのですか?」
うんと大きく頷いて、頬にピースをくっつけた璃音。
璃音 「僕の魔法なら、どんな女の子もキュートなシンデレラに変身させてあげられるよ」
女子達「璃音様ステキ~」
「さすが美少女より可愛い王子様!」
璃音 「(キュートウインクで)ありがと」
朝妃(昨日まで王子様になりきっていた私。なぜ急に、キュートガール風になってしまったかというと……)
朝妃はまだ、ブレザーとミニスカートの女子制服に慣れていない。
恥ずかしがりながらスカートのすそを両手で下に引っ張り、昨日のことを思い出す。
〇朝妃の回想。昨日の放課後。
朝妃(昨日の体育の時間、勇大の前で泣いてしまった私。保健室で帰りの時間まで過ごしていたら……)
〇保健室
璃音「朝妃ちゃん、行くよ」
朝妃(強引に連れ去られ)
〇校門前。高級車が止まっている。片側の後部座席のドアがオープン状態。
璃音「乗って」
朝妃(車に押し込まれ)
〇お屋敷の前。
車を降りて立ち尽くす朝妃。
璃音「(ニコッ)僕のお家にようこそ」
朝妃の目の前には、お城並みの大豪邸。
玄関ホールには、たくさんのメイド&執事が立ってお迎えをしている。
朝妃は驚きすぎて、開いた口が塞がらない。
執事「お帰りなさい璃音様」
執事の声のあと、メイドたちも一斉にお辞儀。
非現実的すぎて、ひぃえぇぇぇ~と怯えながら璃音の後ろに隠れる朝妃。
璃音「地下のカラオケルームをパーティ仕様にしてくれる?」
執事「かしこまりました」
〇カラオケルーム。
横10メートル、奥行き4メートル、ひざ高のステージあり。(中央に上るためのステップあり)
ステージよりも広い客席。
客席の奥の壁に、大型スクリーン。
カラオケルームの入り口の壁で、オロオロしながら立ち尽くす朝妃。
メイドたちがテキパキとテーブルやソファを運び、丸テーブルにパーティ料理やデザート、ドリンクを並べていく。
メイドたち「ごゆっくりお楽しみください」
メイドたちが一斉にお辞儀をして、部屋から出ていく。
朝妃「(驚き顔で)璃音君って、本物の王子様なの?」
璃音「大切にしたいお姫様の前では、男はみんな王子様になれるでしょ?(ニコッ)」
キュートな笑顔を惜しみなく朝妃に振りまく璃音。
麗しい璃音の笑顔に、朝妃がドキドキしてしまう。
璃音が中央のステップを上り、ステージの上に。
ステージ下にいる朝妃に手を差し伸べる。
璃音「さぁお姫様、自分の中の『好き』を開放する時間だよ」
覚悟を決めた様に、璃音の手に自分の手を乗せる朝妃。ステージの上へ。
璃音の歌を聞いてる朝妃のカット。
立ったまま璃音と一緒に歌う朝妃のカット。
璃音と一緒に、アイドルの曲を全力で踊る朝妃のカット。
朝妃と一緒に笑って、泣いて、歌って、踊って……
〇次の朝(今朝)。カラオケルーム。
ソファに寝ている朝妃が、ゆっくりと目を開ける。
朝妃(この天井……私の部屋じゃないような……)
ソファの横(朝妃の顔の真横)で正座をして、満足そうに微笑む璃音。
璃音「やっと起きた。学校に行く準備をしないと遅れちゃうよ」
朝妃「……」
璃音「まずは、朝ごはんを食っべよ~ね(ルンルン)」
飛び起きた朝妃。部屋の中をキョロキョロして青ざめる。
朝妃「無断外泊? お母さんたちが心配してるよぉ……(オロオロ)」
璃音「心配しなくても大丈夫だよ」
朝妃「?」
璃音「僕の母がちゃんと連絡をしたから」
〇広すぎるダイニング。20人は座れるダイニングテーブル。
璃音と向かい合って、贅沢な朝ごはんを食べる朝妃。
〇大理石の広すぎるバスルーム。
お風呂に入る朝妃。
〇璃音の部屋。
バスローブで璃音の部屋に通された朝妃。
璃音から渡されたのは、女子の制服。
朝妃「(恐怖で青ざめながら)……これは」
璃音「さぁ~今から、朝妃ちゃんを世界一可愛い女子高生にしちゃうからね~」
くしとドライヤーを持った璃音が、悪そうな顔で微笑む。
ひぃえぇぇぇ~と恐怖顔の朝妃。
(回想終了)
〇新緑の並木道
璃音と歩きながら、朝妃は手をおでこに当て溜息。
朝妃「こんな恥ずかしい姿……勇大に見せられないよぉぉ……」
〇新緑の桜の木に寄りかかって、スマホを見ている勇大。
勇大(……あれって)
女子の制服に、片側だけユル編みした髪型のザ・女の子の朝妃を見て固まる勇大。
朝妃と視線が絡んだ。でも、気まずそうに視線をそらされた。
勇大はムカつきながら、朝妃の目の前に。
勇大「何、その格好」
朝妃「(目をそらしながら)勇大は……一人で登校?」
勇大「昨日、家に帰らなかったんだって?」
朝妃「お母さん、おしゃべりすぎ」
勇大「(きつめに)俺の質問にちゃんと答えろ! 昨日はどこに泊まった?」
気まずそうに視線を逸らし続ける朝妃。
朝妃の両肩に手を置いた璃音。朝妃の背中からひょこっと顔を出す。
璃音「(ニコニコ)朝妃ちゃんの寝顔、すっご~く可愛かったよ」
さらにイラっ。額の血管がピクっとした勇大。
璃音「今度はお揃いのパジャマで寝ようね」
朝妃「璃音君、誤解を招くような言い方をしないで!」
璃音「僕は本当のことしか言ってないよ」
朝妃「昨日は踊り疲れて寝ちゃっただけでしょ!」
璃音に意見する朝妃が、璃音にじゃれているように見えてしまう勇大。
うつむき、唇をかみしめ、悔しそうにげんこつを握りしめる。
勇大「(ぼそっ)勇気なんか……出さなきゃよかった……」
朝妃「えっ?」
勇大は顔を上げ、朝妃に怒りをぶつける。
勇大「俺が変わったって朝妃は言ったけど、見た目だけじゃなく性格まで変わったのはお前の方だろうが。幼稚園のころから俺に嘘ついてたってなんだよ! ほんとがっかりだ!」
朝妃「勇大に嘘をついていたのは謝るよ。本当にごめん。でもこれには理由があって……」
勇大「だから、その理由を言えよ!」
朝妃「……言えない」
(好きって言っても、失恋するだけでしょ? 勇大には麗華ちゃんがいるんだから……)
勇大「(怒りの大噴火状態で)オマエには似合ってない! 女子の制服も、男に媚びるための髪型もな!」
朝妃に暴言を吐き、校舎に向かってすたすたと歩いて行った勇大。
朝妃はものすごく悲しい顔をする。
朝妃(わかってるよ。男顔の私が……可愛い女の子になれないことくらい……)
朝妃と勇大のすれ違い状態で、5話はおしまい。