溺愛甘々トライアングル
第六話
☆第六話☆
朝妃(この一週間、私は勇大に避けられている)
〇廊下
女子の制服で片側だけ編み込みの可愛い系ファッションに慣れてきた朝妃。
廊下で女子と話していると、前から勇大が歩いてきた。
朝妃「(オドオドしながらも)おはよう」
勇大は目も合わせず、ガン無視で通り過ぎていく。
悲しむ朝妃。
〇教室
サッカー部員(北原)と、海外プロのプレーについて語り合っている勇大。
北原「オマエってさ、話すと面白いんだな」
勇大「ディスるな」
北原「悪い意味にとるなって。勇大って今まで、桃園さんにしか笑顔見せない奴だったじゃんか。俺に心開いてくれたことが嬉しいんだよ」
勇大「ハズイこと言うなよ、アホ(フッと笑う)」
北原「笑った顔、可愛いじゃん」
勇大「可愛い言うな」
離れたところで勇大を見ていた朝妃。
二人の会話は聞こえていない。
朝妃(……勇大が楽しそうに笑ってる)
朝妃と勇大の視線が絡む。
でも勇大は、不機嫌顔でプイッと目をそらす。
〇放課後。サッカーグラウンドに行く途中の校舎横。
女子達から見えないところで足を止めた朝妃。
勇大について話している女子達の会話に、耳を傾ける。
女子「勇大様、最近雰囲気変わったよね」
女子「イケメン魔王度が増した感じ」
女子「彼女できたからじゃない?」
女子「サッカー部のマネージャーでしょ? あの子可愛いよね~」
朝妃の胸がギューッと痛む。
校舎に手をつき、サッカー部の練習を見つめる朝妃。
勇大と麗華が話している姿に、悲しみのため息が漏れてしまう。
朝妃(本当に付き合ってるんだ。この世界で女は私だけでいいって、言ってくれたのにな……)
璃音が朝妃のところにやってきた。
璃音「辛いなら見なきゃいいのに」
朝妃「……目に入っちゃう」
璃音「自分を辛い状況に追い込むなんて、朝妃ちゃんはドMなの?」
朝妃「(溜息)……ドSの魔王様に気に入られたかったんだろうね。……勇大と出会う前の私は、こんなんじゃななかったよ」
璃音「アハハ~ 勇大君を諦める気ゼロじゃん」
朝妃「そんな簡単に気持ちをきりかえられないよ。10年以上も好きだったんだから」
璃音「僕を好きになれば、朝妃ちゃんは幸せになれると思うんだけどなぁ。僕、めっちゃ一途で、めっちゃ優しくて、めっちゃ尽くすよ」
朝妃「初対面で私に言ったよね? 人生なめきってるの?って。しかもニコニコ笑顔で」
璃音「魔王様にかけられた呪いを解くためには、猛毒を注入しないと目が覚めないかなって思ってね。でもそのおかげで、偽り続けてきた自分の感情を解き放つことができたでしょ?」
朝妃「……そうだね」
璃音「ほら、暗い顔しないの。朝妃ちゃんの笑顔は、人の心をぽかぽかにする陽だまり効果があるんだよ。笑って、笑って」
まだ笑顔になれない朝妃。
璃音「ここでラブリリーの新曲踊っちゃう? 二人で。 音源あるよ」
笑顔の璃音。顔の横で、手に持ったスマホをふる。
朝妃は慌てだす。
朝妃「外でダンス? 恥ずかしすぎだよ! みんなが集まってきちゃう」
璃音「いいじゃん。朝妃ちゃんファンにも見せてあげたいんだ。アイドル以上に可愛いく踊る朝妃ちゃんをね」
スマホで音楽をかけ始めた璃音。
朝妃は璃音に手を伸ばし、音楽を止めようとする。
朝妃「目立っちゃう! 音楽止めて!」
璃音「アハハ~ 焦る朝妃ちゃんも、かっわいい~~」
〇グラウンド。サッカーの練習中。
ボールの上に右足を乗せ、遠くにいる朝妃を見る勇大。
朝妃と璃音のじゃれ合いを見ると、苦しくてたまらない。
勇大(いちゃつくなら、俺の目に映らないところでやれよ! マジで……しんどい……)
〇グラウンドの外。
朝妃と璃音のところに、女の子が駆けて来た。
女子「あさひ様、アイドル好きですよね?」
朝妃(なぜそれを?)
朝妃は璃音を見る。
璃音は朝妃から顔を背け、両手を頭の後ろに当て、僕じゃありませんみたいに口笛を吹く。
女子「ラブリリーの曲を踊れるって聞きました」
璃音「そうだよ。歌もダンスも完璧。ラブリリーに入ったら、センターを奪えちゃうくらい可愛いんだから」
朝妃「(怒りながら)璃音君!」
女子「あさひ様、お願いします!」
深く頭を下げる女子に、朝妃ははてな顔。
女子は朝妃に、紙を差し出している。
女子「私を助けると思って、これにサインをしてください!」
朝妃「これは……」
紙をまじまじ見る朝妃。
朝妃(……入部届?! しかも……アイドル部?!)