人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
2人で戻ったロイの部屋で、大きくあくびをするロイにベッドをすすめる。
「仕方ないので、寝るまで側にいてあげますから。早く寝てください」
なるべく素っ気なさを装って、アリアは簡易イスをベッドの側に運びながらそう言った。
そんなアリアを見てベッドに腰掛けロイは、
「膝枕」
ぽんぽんっとベッドを叩いてアリアの方を見ながらそう言った。
「はい?」
「膝枕してくれたら寝る」
ひざまくら…………だと? とロイの要求が理解できず一瞬フリーズしたアリアが、
「はぁ? なんで私が」
そんなことをと顔を赤くして拒否すると、
「じゃあ寝ない。ずっと寝ない。朝まで寝ない」
とロイは子どものような駄々をこねる。
「寝るまで居てくれるんだろ? 言質は取ったぞ?」
こてんと小首を傾げるロイにこの人はっと呆れつつも、男の人なのに可愛いなんて思ってしまったアリアはもうどうにでもなれと半ば投げやりに要求を受け入れた。
「アリア、相変わらず押しに弱いな」
アリアに膝枕されたロイはくくっと喉で笑う。
「頼まれたら誰でもやるのか?」
「やるわけないでしょう!」
「つまり俺が特別ってわけだな」
顔を赤らめたまま言葉を失ってしまったアリアに満足気な顔を向けたロイは、横向きになってアリアの腰にぎゅっと腕を回す。
「殿下っ、調子に乗りすぎではないでしょうか!?」
「あんまり声を荒げてるといつまでたっても眠れないなぁ」
クスクスと楽しそうに笑って、俺はそれでも構わないけどとロイはそう言う。
「〜〜早くっ、寝てください」
これ以上ロイと話すといらない墓穴ばかり掘りそうだとアリアは反論を諦めた。
「今日の殿下は、なんか変です」
具体的に何がとは言えず、アリアはぽつりとそう漏らす。
「んー1月半分、埋めようと思って」
そんなアリアの問いかけにロイは静かに返事をする。
「あのままほったらかす気、本当はなかったんだよ。ルークが次逃走したら胃に穴開くとか泣き言もらすから仕方なくてな」
さすがに部下の胃に穴は開けられないなぁとロイは苦笑して、
「アリアはちょっとはやきもきしたか?」
と尋ねる。
「いいえ、全く」
ツンとそっぽを向いてそう答えるアリアにクスクス笑って、
「つれないなぁアリアは」
そう言ったあとで、本当に嘘が下手だなとロイは小さくつぶやいた。
「殿下こそ、私があんな事を言ったと言うのに思うところはないのですか?」
全然いつも通りなんですけどと、ロイが変わらない態度であることに少しホッとしながらアリアは尋ねる。
「それこそ今更だろ。初手で初夜拒まれ、離宮に行きたいって物理的に距離取られ、結婚して2回目に会った途端に離縁申し込まれてるからな、俺」
今までの所業を並べてみると、なかなかにひどいなとアリアは苦笑する。
「何にも思わないなんて、そんなことはないないけど、まぁ俺諦め悪いから。アリアが諦めて。夫婦円満の秘訣はどちらかが折れることらしいぞ」
ハイ、解決と勝手にロイにまとめられる。
「…………横暴すぎではないですか、その理論」
それだと私の意見全拒否じゃないですか、とため息をつくアリアに、
「他の事は譲歩してる。たとえば、いまだに他人行儀な呼び方とか」
とロイはぼそっとつぶやく。
「え?」
「ルークもクラウドもマリーも呼び捨てなのに、俺はほぼ名前すら呼ばれてない」
「いや、そこ同列にされても」
拗ねたようにそんな事を言うロイにアリアは小さく笑う。
1回目の人生では、ずっとロイ様と名前で呼んでいた。逆に彼から名前で呼ばれる事などほとんどなくて、名前で呼ばれるヒナの事がずっと羨ましかった。
今世は意識的に呼ばないように努めていたし、本音が漏れた数回を除いては呼んだ記憶もない。
「仕方ないので、寝るまで側にいてあげますから。早く寝てください」
なるべく素っ気なさを装って、アリアは簡易イスをベッドの側に運びながらそう言った。
そんなアリアを見てベッドに腰掛けロイは、
「膝枕」
ぽんぽんっとベッドを叩いてアリアの方を見ながらそう言った。
「はい?」
「膝枕してくれたら寝る」
ひざまくら…………だと? とロイの要求が理解できず一瞬フリーズしたアリアが、
「はぁ? なんで私が」
そんなことをと顔を赤くして拒否すると、
「じゃあ寝ない。ずっと寝ない。朝まで寝ない」
とロイは子どものような駄々をこねる。
「寝るまで居てくれるんだろ? 言質は取ったぞ?」
こてんと小首を傾げるロイにこの人はっと呆れつつも、男の人なのに可愛いなんて思ってしまったアリアはもうどうにでもなれと半ば投げやりに要求を受け入れた。
「アリア、相変わらず押しに弱いな」
アリアに膝枕されたロイはくくっと喉で笑う。
「頼まれたら誰でもやるのか?」
「やるわけないでしょう!」
「つまり俺が特別ってわけだな」
顔を赤らめたまま言葉を失ってしまったアリアに満足気な顔を向けたロイは、横向きになってアリアの腰にぎゅっと腕を回す。
「殿下っ、調子に乗りすぎではないでしょうか!?」
「あんまり声を荒げてるといつまでたっても眠れないなぁ」
クスクスと楽しそうに笑って、俺はそれでも構わないけどとロイはそう言う。
「〜〜早くっ、寝てください」
これ以上ロイと話すといらない墓穴ばかり掘りそうだとアリアは反論を諦めた。
「今日の殿下は、なんか変です」
具体的に何がとは言えず、アリアはぽつりとそう漏らす。
「んー1月半分、埋めようと思って」
そんなアリアの問いかけにロイは静かに返事をする。
「あのままほったらかす気、本当はなかったんだよ。ルークが次逃走したら胃に穴開くとか泣き言もらすから仕方なくてな」
さすがに部下の胃に穴は開けられないなぁとロイは苦笑して、
「アリアはちょっとはやきもきしたか?」
と尋ねる。
「いいえ、全く」
ツンとそっぽを向いてそう答えるアリアにクスクス笑って、
「つれないなぁアリアは」
そう言ったあとで、本当に嘘が下手だなとロイは小さくつぶやいた。
「殿下こそ、私があんな事を言ったと言うのに思うところはないのですか?」
全然いつも通りなんですけどと、ロイが変わらない態度であることに少しホッとしながらアリアは尋ねる。
「それこそ今更だろ。初手で初夜拒まれ、離宮に行きたいって物理的に距離取られ、結婚して2回目に会った途端に離縁申し込まれてるからな、俺」
今までの所業を並べてみると、なかなかにひどいなとアリアは苦笑する。
「何にも思わないなんて、そんなことはないないけど、まぁ俺諦め悪いから。アリアが諦めて。夫婦円満の秘訣はどちらかが折れることらしいぞ」
ハイ、解決と勝手にロイにまとめられる。
「…………横暴すぎではないですか、その理論」
それだと私の意見全拒否じゃないですか、とため息をつくアリアに、
「他の事は譲歩してる。たとえば、いまだに他人行儀な呼び方とか」
とロイはぼそっとつぶやく。
「え?」
「ルークもクラウドもマリーも呼び捨てなのに、俺はほぼ名前すら呼ばれてない」
「いや、そこ同列にされても」
拗ねたようにそんな事を言うロイにアリアは小さく笑う。
1回目の人生では、ずっとロイ様と名前で呼んでいた。逆に彼から名前で呼ばれる事などほとんどなくて、名前で呼ばれるヒナの事がずっと羨ましかった。
今世は意識的に呼ばないように努めていたし、本音が漏れた数回を除いては呼んだ記憶もない。